プレイバック1980年代/村田晃嗣

 

 

 国際関係論を専門とされる方が語られる1980年代の年代記です。

 

 この方、1964年の神戸生まれということですので、生まれの年代も近いですし、出身地も被るということもあって勝手に親近感を抱きますが、概ね学生時代が1980年代だったようで、ワタクシが少し遅れて大学の卒業が1990年代に差し掛かってはいますが、かなり思い起こす風景は近いものがあるんじゃないかという気がします。

 

 ご専門がご専門なので、国際情勢や政治に関する言及が大半を占めていますが、1980年代を、1980~89年まで1年ごとにその年の出来事を振り返っていく形を取られていて、それぞれの年の最後の部分でスポーツだったり芸能だったりといったことにも少しずつ触れられています。

 

 まとめのところで、1980年代というのは日本にとって「坂の上の雲」に登り詰めた年代という風におっしゃっておられて、結局今に至るまで「絶頂」にいた時期にあたり、その後坂道を転がり落ちるように、特に経済的に悪化して行くワケですが、それでも世相を見ているとバブルの華やかなりし時代だったはずですが、混とんとした空気ばかりが思い起こされるのは不思議です。

 

 何よりも1989年初頭に「昭和」が終焉を迎え、かつベルリンの壁の崩壊などがあり実質的に冷戦が終結し、ひいては冷戦構造に恩恵を受けていた日本の高度経済成長が「終わりの始まり」を迎えたのが1980年代と総括されていたのが、言い得て妙だと感じます。

 

 ただ、多く語られている日本の政治の状況については、派閥政治が一旦崩壊の気配を見せ始め、細川政権民主党による政権交代などを経て、また小泉政権における派閥解消の動きなど契機に一旦解消に向かったかに見えましたが、安倍政権の長期化によりまたゾンビのようによみがえって入るのですが、そういう旧弊がどこまで生きながらえて、日本の成長の足を引っ張るのか、暗澹たる思いがします。