グダグダの種/阿川佐和子

 

 

 数年前に長すぎる独身生活にピリオドを打たれたことで話題になったエッセイストの阿川佐和子の2000~2006年に雑誌に執筆されたエッセイをまとめたモノです。

 

 阿川さんというと、いわゆる”負け犬”キャラがテッパンネタだったので、結婚をされたらネタに困るんじゃないかと他人事ながら心配になるのですが、この頃はやはりテッパンの”負け犬”ネタ全開です。

 

 この本に収録されているエッセイを書かれた頃は、ある程度年齢を重ねられて、結婚話に翻弄されることも少なくなって、おひとりながら充実した日々の生活からのトピックを繰り広げられていて、この方、既婚未婚関わらず広く女性に人気があるのは、独身だからという暗さが全くと言って感じられないところがあるのかも知れません。

 

 時折、ネタとしての”負け犬”フレーバーを織り交ぜられてはいるモノの、実は全然そんなこと思ってないでしょ!?とツッコミたくなるほど突き抜けた雰囲気を漂わせており、きっと日々に疲れた”勝ち犬”組が読んでも、ちょっと”負け犬”のままでいることへの憧憬を感じさせるんじゃないかと思わせるような愉しさを感じさせます。

 

 そういう一人の生活を楽しみ尽くした上でのご結婚というのは、実は新しいライフスタイルの方向性を示されているんじゃないかという気すらして、今後も結婚後の生活を織り交ぜた旺盛な執筆活動を期待したいところです。