最後に語り伝えたいこと/立花隆

 

 

 昨年4月に亡くなられた”知の巨人”立花隆さんの没後に出版された、これまでの著書に未所収だった長崎大学での2015年の講演や1991年の大江健三郎さんとの対談などを収めた書籍となっています。

 

 冒頭の長崎大学での講演では、ご自身がジャーナリストを志された原点として、アサヒグラフ誌での原爆被害の報道を挙げておられて、戦争体験を後世に受け継ぐことをライフワーク的に取組んでおられることを話されていますが、如何にリアリティを受け継ぐかということに心を砕かれているかということで、各国の戦争体験を紹介する博物館のネットワーク化したバーチャル博物館の実現に向けて、最期まで奔走されていたということです。

 

 後半の大江健三郎さんとの対談は、ソ連の瓦解~東西冷戦構造の終焉という歴史的な転換を踏まえてということですが、日本を代表する知性であるお二方にとっても当時の一連の出来事というのはかなりの驚きをもって受け止められたようです。

 

 その後、現在の米中対立に至るワケですが、その時点でそこまでの中国の台頭を見通されていた様子はなく、ここ30年程の醸成の激動を改めて痛感する次第でした。

 

 ということで、お亡くなりになるそれなりに前で、多少カンバンに偽りが感じられるものではありますが、立花さんが遺したものの巨大さを少しは垣間見れるものとなっています。