「嫌いっ!」の運用/中野信子

 

 

 脳科学者の中野センセイが「嫌い」という感情について、脳科学的な観点を紹介された本です。

 

 日本では、好き嫌いなく何でも食べましょうね!?とか、誰とでも仲良くしましょうね!?とか、とかく「嫌い」という感情にネガティブな評価を下しがちですが、「嫌う」という感情は生物学的には、例えば腐ってたりとか自分のカラダに取って有害な食物を摂ることを避けるということや、本能的に危険な相手を遠ざけるといった生物学的な要請に根差した反応であることも少なからずあって、必ずしも「嫌い」という感情をガマンすることがその人にとってプラスにはならないことがあるということを認識しておくべきだと指摘されます。

 

 まあ、だからと言って学校や会社で本能のままに、アイツがキラい!コイツもムカつく!なんてやってたら誰からも相手にされなくなるのは間違いないので、ある程度は、そういうところを抑制して行かないワケで、その対処法についても紹介されています。

 

 よく言われるように、嫌うようになった理由を考えてみることで、なんだそんなくだらないことで…みたいに感じることも多いようですし、よくよく聞いてみればその理由というのが誤解や偏見に基づくモノであったりして、よく知ればその原因が払拭されたりもするようです。

 

 特に深刻に作用する恐れの高い家族における「嫌い」についても、近親者だという甘えから、思いやりが欠如している可能性が高いということもあり、もっとよく家族を観察することでそういう感情が払拭される可能性も指摘されています。

 

 さらには最も深刻な「自己嫌悪」についても触れられていて、不満に思っている自分の特徴を裏側から見ることで長所とも捉えられるモノであることを見直してみるべきだということも語られており、自分一人で思いつめずに色んな人の意見を聞いてみることで、悩みが軽減されることもあるんだということを認識しておくと、かなり気がラクになるようです。

 

 まあ、嫌悪感を抱くことが悩みにつながるということ自体が日本社会の不寛容性を象徴しているようで不満にも思えますが、だからこそ秩序ある社会が保てているんだという風に思った方がいいのかも知れません…(笑)