ネット大国中国/遠藤誉

 

 

 中国を中心にアジア諸国の国際情勢の研究家として知られる遠藤誉さんが語られる中国のネットを取り巻く状況について紹介された本です。

 

 この本は2011年に出版されたモノなので、この本が出版された時点から中国のネットを取り巻く環境は著しい進展を遂げているワケですが、この本は特に中国政府のネット監視の状況を中心に紹介されています。

 

 特に2010年末に発生したチュニジアにおけるジャスミン革命の事例にかなり神経質になっていたようで、ネットにおける反政府的な動きへの監視の体制を確立するのに躍起になっていた時期だということで、検閲をめぐってGoogleを中国から撤退させる経緯だったり、ネット上の「万里の長城」と言われるグレートファイアウォールという検閲の仕組みなどの仕組みなどを紹介されています。

 

 この頃はまだ胡錦濤政権だったので、現在の習近平政権においてより精緻なネット上の管理の仕組みが完成するワケですが、この頃から既にネット上の監視はモチロン、政府機関がなりすましでSNSに投稿することによる世論の形成といったことも実施していたということで、しかも割と反政府的なネット民にウケのいい、政府の高級官僚の汚職摘発なども織り交ぜてガス抜きをするなど、硬軟織り交ぜてのネット世論形成の対策の巧みさには感嘆させられます。

 

 さらには、経済的な繁栄も相まって、反政府的なネット世論はかなり影を潜めているように見えて、ある意味少数独裁の理想的なカタチを見せつけられているような気すらします…