中国のデジタルイノベーション/小池政就

 

 

 ひと頃の飛ぶ鳥を落とす勢いは多少ナリを潜めたモノの、それでも日本と比べると遥かに活発であろう中国経済の原動力であるデジタルイノベーションについて語られた本です。

 

 中国というと日本と比べて遥かにビジネスのスピード感が早いということを、ワタクシが会社の仕事で中国に絡んでいた2013年頃も感じていましたが、ネット関連のビジネスが本格化して以降、そのスピードが以前にもまして加速した感があり、コンセンサスを重視する日本にはとてもついていけない状況となっており、その背中は遥か霞んで見えなくなっているようにすら思えます。

 

 ネット関連のビジネスでも特に電子決済関連のビジネスが本格化したところから、その加速感が急激に増した感じで、元々中国では偽札などが蔓延していて通貨に対する不信感があったところに、安心かつ迅速に決済するサービスが普及したが故に、皆がそれに飛びつき、電子決済に関連したサービスがイッキに開花したという側面もありそうです。

 

 そういうサービスでも特に目新しい技術を投入するワケではなく、当初はQRコードという既存の技術を活用しただけですが、既存のツールを組み合わせて迅速かつ安価に決済のフレームワークを導入したことがテイクオフの重要な要素となったようで、そういう組み合わせをいろいろと試してみて、次から次へと失敗してもまた次の組み合わせをというカタチでトライアル&エラーの繰り返しがどんどんと高みに押し上げて行っているような感じで、何かと失敗を避けたがる日本には、これまたなかなか手を出しにくい状況で、こういう部分でも中国の後塵を拝しています。

 

 さらには大学ではそういう人たちが切磋琢磨して、次々と新たなアイデアを試すような環境にあり、それこそイノベーションが泉のごとく沸き立つ状況にあるようで、しかもビジネス化のハードルも極端に下げているということもあって、湧くようにビジネスが発生しているということです。

 

 特に日本では練り上げたビジネスモデルが成功した経験から、トライアル&エラー的なアプローチでいろいろ試してみるといったモデルは取り入れにくいでしょうし、更には失敗を恐れる国民性もあって、なかなか取り組みにくいでしょうけど、そんなこと言っているとどんどんと中国の背中が遠のいて行きそうです…