やっぱりただの歌詞じゃねえか、こんなもん/桑田佳祐

 

 

 元々、サザンオールスターズの歌詞について語った『ただの歌詩じゃねえか、こんなもん (新潮文庫)』『ただの歌詩じゃねえか、こんなもん ’84‐’90 (新潮文庫)』という本が出版されているということなのですが、この本は桑田さんのソロ活動集大成としてリリースされた『I LOVE YOU -now & forever-』のリリースと合わせて出版されたモノで、ソロ時代の楽曲の歌詞について語られたモノとなっています。

 

 元々、サザンオールスターズの初期は、先日紹介した『サザンオールスターズ1978-1985』でも触れられていたように、60-70年代のロックのマニアであったメンバーが好きな音楽を好きなように演奏するという志向が強かったということで、歌詞は二の次で、できた曲のイメージに当てはめて行ったようなところがあったようで、それが逆に斬新なモノだとして評価されたことには戸惑いもあったようなのですが、未だに曲を作る時は楽曲先行で、後から歌詞をつけるスタイルは続いているようです。

 

 ソロ活動を始めるにあたって、その後Mr. Childrenのプロデュースで知られるようになる小林武史さんをプロデューサーとして迎えるのを機に、ある程度カッチリしたモノを作ろうということで、取組まれたのが大きな転機となったようです。

 

 サザンの楽曲でも次第に歌詞が社会性を帯びて来てはいましたが、そういう転機を経て歌詞の世界に奥行きを増していったところ、2011年リリースの『MUSICMAN(通常盤)』制作中に食道癌に罹ったことなどもあって、より深遠な世界を描き始めたのも桑田さんの音楽の世界を広げることになったようです。

 

 それでも、湿っぽくならずポップスの本来的な楽しさを損なわずに深い奥行きの音楽を提示するのが桑田佳祐たるゆえんかもしれず、随分齢を重ねられましたが、変わらず元気に活動してもらいたいものです。