現代日本を読む/武田徹

 

 

 以前、『日本ノンフィクション史』という本を紹介しましたが、著者の武田徹さんが、今回は作品を中心にノンフィクションの進化を語られた本です。

 

 そもそもノンフィクションというのは、ジャーナリズムが起点となっていて、新聞や雑誌などジャーナリズムで取り扱うテーマを、もう少し長めの読み物として成り立つようにしたものが、そのハシリだということのようです。

 

 そんな中で次第に読み物としての読み応えみたいなモノが求められるようになり、表現の方法論として文学に接近して行くワケですが、その過程について若き日の沢木耕太郎さんが『紙のライオン』所収のエッセイに中で語られている、当時アメリカでもてはやされていたニュージャーナリズムの方法論の活用についてこの本でも語られていますが、その結実としての『テロルの決算』が紹介されています。

 

 そういった中で文学とジャーナリズムのせめぎ合い見たいなものがノンフィクションの発展に寄与してきたことについて、小説家の開高健氏がベトナムに従軍記者として参加した経験を『ベトナム戦記 新装版 (朝日文庫)』としてまとめたモノが、三島由紀夫吉本隆明に、わざわざ小説家が書くようなモノである必然性が無く、新聞記者の反中を出ていないとケチョケチョに酷評された挙句、それを名作『輝ける闇 (新潮文庫)』に昇華させていくといった、文学とノンフィクションの相互作用による昇華の過程を紹介されています。

 

 また、アカデミズムや日記など、様々な素材がノンフィクションのテーマとしてどのように発展して行ったのかなど、前作にも倍して、かなり読み応えのあるノンフィクション論となっています。

 

 結構、この本に紹介されている本で、読みたいモノが溢れてますので、徐々に紹介して行きたいと思います。