組織で生き延びる45の秘策/池上彰、佐藤優

 

 

 このお二方の対談本も随分出版されていますし、このブログでも取り上げましたが、極めて多様なジャンルに及んでおりお二方の博識ぶりには驚嘆せざるを得ませんし、お二方の信頼関係が共著を重ねるに従いより深まって行っていることが感じられますが、今回はドストエフスキーからトランプ、オードリー・タンに至るまで古今の偉人(トランプは偉人なのか!?)から学ぶ、組織での泳ぎ方です。

 

 お二方ともカタチを異なるにせよ、組織を離れて活躍されている方々なのですが、元々所属していた組織が固陋を絵に描いたような組織だっただけに、その泳ぎ方には一家言あると思われ(佐藤さんは、最期にイタイしっぺ返しを受けたとおっしゃられていますが…)、そういうご経験と古今の著名人の実例を踏まえて語られています。

 

 トランプを取り上げられていることでもわかるように、必ずしも取り上げられている人物が組織の泳ぎ方に成功しているとは限らないワケで、失敗例には失敗例なりの学びがあるということです。

 

 この本で特に印象的だったのは、何度か「限定合理性」というコトバが出てくることで、日本人はとかく置かれた環境の制約条件の下でしかモノを考えられないという傾向が強いということで、乃木希典の無謀な特攻の繰り返しも、おかれた環境の中ではその選択肢しかありえなかったという側面はあるのですが、もうちょっと柔軟に広げて考えていれば、もう少しマシなやり方もあったんじゃないかということなのですが、日本社会では官公いずれにおいても、そういった「限定合理性」に基づく最適解を求めようとすることが多く、近くは東芝の粉飾などにもみられるということです。

 

 翻って、何としてでも実現しなくてはならない目的がある人にとっては、そんな制約条件も取っ払って、とにかく目的の実現のために必要なことは何でも取り入れるということで、台湾の李登輝元総統の姿勢も取り上げられています。

 

 組織で生き抜くためには、過度に理念に依拠することも危険なこともあるようですが、逆に信じるところが無ければ流されるだけになってしまうということで、「とかくに、人の世は住みにくい」ということなんでしょうか…