トヨタの失敗学/(株)OJTソリューションズ

 

 

 トヨタの製造工程出身の方が中心となって立ち上げられたコンサルファームで、トヨタで培ったノウハウを外部でも指導されている方々が紹介される「失敗の活かし方」についての本です。

 

 冒頭で“扉”でいきなり、

  トヨタで「失敗」という言葉はない。

とだけ書かれているのですが、モチロン世界に冠たるトヨタの製造工程においても、数限りなくトラブルや問題は起こっていて、中には数十億円という巨額の損失を伴う「失敗」もあったということなのですが、長い目で見てそういった「失敗」も何らかの「教訓」となって、企業の成長、発展のタネになっているということで、究極的には「失敗」はない、ということなんだそうです。

 

 レトリックじゃない!?と言ってしまえば、そうなのかも知れませんが、外から見れば会社が吹っ飛ぶような「失敗」をしていたとしても、当事者がそれを隠すことなく開示し、徹底的にその「真因」を追求して、根本からの再発防止のための施策を講ずることで、少なくともその範囲においては安心して仕事を進められるようになることは、大きな進化と捉えられているようです。

 

 そのために「なぜその問題が発生したのか?」ということを、「真因」があぶり出せたと関係者すべてがナットクできるまで、その「なぜ?」という問いを繰り返して、中には10回以上も繰り返すことすらあるようです。

 

 ワタクシ自身も製造業にルーツを持つ会社に勤務していて、問題が発生した際に「なぜ?」を繰り返して「真因」を探るという仕組みが取り入れられてはいて、エンジニアリング分野では一定の成果があるとは聞いていますが、ワタクシ自身が所属しているIT分野ではカタチだけに終わってしまっていることが大半だと感じています。

 

 おそらくそうなってしまっているのは、「問題」や「トラブル」は悪いことであって、原因を追究すれば起因となった人が責められてしまうんじゃないかという懸念があるからなんじゃないかと思いますし、トヨタのようにトラブルを開示したことがホメられて、トラブルでかかったコストの分だけ一丸となって取り返すようなネタを見つけてやろう、みたいな意気込みが無いからなんだとしか思えません。

 

 ちょっとした意識の転換なのかも知れませんが、こういうちょっとした意識の差を作り出すためにこんなにも多大な努力がつぎ込まれていて、その結果、気が遠くなるような違いをもたらすということなんでしょうねぇ…