レンズが撮らえた幕末日本の事件史/日本カメラ博物館

 

 

 ペリー来航から明治維新期に残された写真をもとに幕末史を語るという本です。

 

 幕末期には、ボチボチ写真撮影が始まっていたのですが、教科書なんかではパラパラその頃の写真が掲載されてはいますが、日本カメラ博物館では幕末~明治維新期の写真が多く所蔵されているということで、それをイッキに本にまとめて、写真をベースに幕末史を語ろうという、なかなかワクワクさせられる企画の本です。

 

 タイトルで「事件史」を名乗っていながらも、モチロン当時の日本における写真技術では、幕末の事件そのものの写真を残すというのはムズカシイこともあり、当時の人物のポートレート、しかも海外に赴いた人物のモノが中心なのが多少残念ではあるのですが、咸臨丸でアメリカに渡った若き日の福沢諭吉勝海舟や、欧州に留学中の「長州ファイブ」こと若き日の伊藤博文井上馨の若き日の写真もあったりとなかなか興味深いところです。

 

 また、文久遣欧使節が観光でエジプトを訪れた際に、侍の風体でスフィンクスの前で撮った写真も掲載されており、さしたる「事件」なワケではないのですが、なかなか興奮させられます。

 

 一番衝撃的だったのが、生麦事件の被害者となった英国人であるリチャードソン氏の遺体写真で、それだけでも事件の生々しさを思い起こさせます。

 

 さらには、写真をベースとして語るということもあって、フツーに歴史を語る上では出てきにくいトピックも多々出現しており、印象的だったのが桜田門外の変の際に、井伊直弼の襲撃にピストルが使用されていたらしい、ということはなかなかの衝撃です。

 

 多少残念な部分も無きにしも非ずなのですが、それでも充分に当時の状況を思い起こさせるのに十分で、なかなかに素晴らしい企画の本ですので、幕末好きの方は必読です!!