「プランB」の教科書/尾崎弘之

 

 

 「プランB」というのは、当初実行し始めた計画「プランA」が何らかの事情でウマく行かなくなったことが見通せる状況になった時に実行すべき代替案のことなのですが、得てして日本企業ではこの「プランB」の発動を躊躇することが多く、「プランA」に固執するがあまり失敗へと直行することが多いということを指摘されています。

 

 そもそも「プランA」を計画する時点で、あらゆる状況を想定して、かつそれぞれの状況に対する対策を講じた上で計画を策定することは不可能であり、そういう想定とは異なる状況に陥った時に「プランB」を発動するもので、「プランA」通りにいかなかったからと言って必ずしも失敗を意味するモノではないはずなのですが、どうも日本の組織においては、「プランB」を発動すること自体が「プランA」の下でプロジェクトを開始した人のメンツに関わることだと捉える傾向が強いようで、それが故に「プランB」の発動を抑止しようとするような同調圧力が働きがちだということです。

 

 ただ「プランA」が想定していた前提となる状況がなくなってしまった中で「プランB」に移行しないということは失敗の確率が圧倒的に高まるワケで、「プランA」を継続しようとする同調圧力を超えてでも「プランB」を発動すべきなはずですが、そういう必然性を超えてでも「プランB」の発動を促そうとするインセンティブは働きにくいようです。

 

 この本ではそういう状況と、それを超えてでも「プランB」を発動させるための方策を紹介されていて、強制的な発動の仕組みを組み込んでおくなどの方策を指摘されていますが、結局は権威のある意思決定者の説得力にかかっているという側面もあり、得てしてそういう意思決定者がメンツにこだわることが多いと「プランA」に固執してしまうという堂々巡り的なことも想定され、なかなか日本における組織ではムズカシイところはあるんでしょうけど、環境変化の激しい中、躊躇なく「プランB」に移行できるような組織的な文化を醸成しないと、グローバル化の中、なかなかキビシイという側面もあるようで、日本のあらゆる組織が究極の選択を迫られるような気がします。