徳川家康の決断/本多隆成

 

 

 今年のNHK大河ドラマ『どうする家康』の主役である徳川家康のターニングポイントでの決断についての本です。

 

 作者である本多さんは『定本 徳川家康』など徳川家康に関する多くの著書がある戦国史・中世史の研究者なのですが、大河ドラマ徳川家康を取り上げることを受けて、編集者に依頼されて、番組の趣旨に近いテーマでの出版となったようです。

 

 桶狭間の戦い大坂の陣に至るまで10章に渡って、徳川家康の転換点を紹介されているのですが、三河土豪に近い存在から天下人に至るまで、上を目指せば当然それだけの障害は襲ってくるとは言うモノの、それにしても波乱万丈の人生で、つねに「どうする」!?に対応し続けた人生だったということを改めて認識させられます。

 

 その中でも本多さんが「三大危機」とされているのが、武田信玄と戦った三方ヶ原の合戦における大敗を最大の危機として、そのあと本能寺の変を受けての伊賀越え、そして本多さん自身もちょっと意外かも!?とおっしゃりながらも、小牧・長久手の戦いを受けての秀吉との和睦を挙げられています。

 

 どれも家康の生死の危機なのですが、本多さんは実は秀吉の政権基盤が盤石で全力で家康を叩き潰しに行ったとすれば、可能だったんじゃということで、実はこちらの方が「最大の危機」だったのかも!?とされているのは興味深いところです。

 

 それぞれの転換点についても、最新の学説に裏付けられた経緯が紹介されているのが興味深いところですが、各論錯綜する桶狭間の戦い本能寺の変についての最新の議論をさりげなく取り上げられているところも意義深いところで、この本を片手にしつつ、それぞれの時点の「どうする!?」を大河ドラマで鑑賞するのは如何でしょうか!?