日本を寿ぐ/ドナルド・キーン

 

 

 司馬遼太郎さんとの交流でも知られる日本文学の研究家であるドナルド・キーンさんの講演をまとめた本です。

 

 この本では、日本と海外との交流についてのトピックが多く取り上げられていて、日本人にありがちなステレオタイプ的な閉鎖的なイメージを払しょくするような内容もあり、なかなか興味深いところです。

 

 どうしても大陸と海を隔てていることもあって、大陸諸国のように日常的に国境を行き来するようなワケにはいかないこともあって、「島国根性」というコトバもあるように閉鎖的なイメージが付きまとう日本人ですが、飛鳥時代以降、朝鮮半島や中国とはかなり頻繁な交流があったようで、昨今の科学的な研究の進化もあり、さまざまな証左も出てきているということです。

 

 また「島国根性」イメージの決定的な要因の一つの「鎖国」下においても、外国との交流は禁止しながらも、幕府自体はかなり積極的に海外の情報を集めていたということで、幕末に開国の交渉に当たった諸外国が幕府の持つ情報に驚いたエピソードを紹介されています。

 

 基本的には、奈良時代の中国に始まって、明治維新時の欧州、現代のアメリカと、日本人は基本的に海外への憧れを持ち続けているということは実感としてわかるところでもあり、行き過ぎた憧憬が「猿真似」と揶揄されることもありますが、それを自分たちの文化に巧みに取り入れていく側面もあり、そういう意味でも実はかなり積極的に海外との交流を望んでいたとも言えそうです。

 

 日本文化に造詣が深く、元々「外国人」としての視点をもつキーンさんならではの講演とも言えそうです。