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 元TBSアナウンサーで現在は様々な雑誌への寄稿でも知られる小島慶子さんや、『「婚活」時代』などジェンダー論で多くの著書がある白河桃子さんといった名だたる論客が執筆陣として並んでいますが、実質的に女性として初めて朝日新聞社の『AERA』誌で編集長を務められ『男性中心企業の終焉』などの著作もあり、最近はコメンテイターとしてもお見掛けする浜田敬子さんが編者を務められた本のようです。

 

 サブタイトルに『ジェンダーから見るネット空間とメディア』となっていますが、実質的には、ジェンダー論とSNSを中心としたネット論、メディア論それぞれで語られている印象が強く、それらがクロスする議論を期待した向きには、かなり肩透かし感がハンパないですが、まあ、それぞれの議論としても興味深い指摘が散りばめられているので油断できません。

 

 ジェンダー論、ネット論、メディア論の3つがクロスしていると言っていいのは、実質的な編者である浜田さん執筆の稿で、『眞子さまはなぜここまでバッシングされたのか』というモノですが、押しなべて言えばここまで叩かれたのは「女性皇族だから」というモノが少なからぬ要素であることを指摘されているところで、これまでも上皇后さまや皇后さまが折に触れてバッシングされてきたのと同様、最近は眞子さま騒動の余波で秋篠宮さまもバッシングにあっていますが、それまで皇族が叩かれるのは女性皇族が多かったのは否定しがたいところかもしれません。

 

 ネットでバッシングが起きやすい要因として興味深い指摘をされているのが、小島慶子さんがネットメディア論で知られる山口真一さんとの対談で「ネットの現状って、自動車が登場したばっかりの頃の道路と似ている気がするんですよね。」とおっしゃっておられるところで、いずれ整然としたネット環境になるんだろうか…と思いつつ、目に見えにくいだけに、交通整備程の進展が進まないんじゃないかという気もします。

 

 ただジェンダーについて、改善が期待できるんじゃないかということでは、コンプライアンス的にやかましくなってきているだけではなく、何らかの意見を広めるのに未だ大きな役割を果たしているマスメディアの責任ある立場に、女性が増えていっているということで、ようやくちゃんと女性の観点が反映できるようになってきつつあるというところが救いというのは、ナットクできる気がします。

 

 ということで、この本はシリーズ物らしいんですが、各論ではなく、もう一度ネットとジェンダー、メディアとジェンダーのガッツリ絡んだ議論を期待したいところです。