ぼけの壁/和田秀樹

 

 

 毎回同じことが書いてあるとボヤキながら手に取っている和田センセイの老後本ですが、今回は認知症についてかなり深いところまでツッコまれています。

 

 『80歳の壁』以降一連の著書の中で一貫して認知症は少なくとも老年については、大袈裟にとらえられ過ぎていると強調されていて、老年性の痴呆症はホントにゆっくりと進行するので、急に徘徊したり暴れたりするくらいは極めて低く、和田センセイのご経験から言うと、それぞれ1~2%に過ぎないということです。

 

 アメリカのレーガン大統領やイギリスのサッチャー首相が退任後、実は認知症だったということを告白されたことで知られていますが、認知症を患っていても国家元首でも務まるということで、個人差はあるにせよ、認知症を発症したとしても今までやっていた仕事などは継続できることが多いということで、むしろ発症したからといって、今までやっていたことを止めさせる方が、認知症の侵攻を速めてしまうリスクが高まるということで、できる限りこれまでの環境を変えずに、一定の行動をさせることで進行を遅らせる効果があると指摘されています。

 

 良かれと思って、子どもが親を呼び寄せた途端、それまでフツーに家事をこなしていたのが、イッキに引きこもって認知症を急激に進行させるという事例が数多くあるということで警鐘を鳴らされています。

 

 それよりも恐れるべきは、老人性うつなんだそうで、それも行動量が減った時点でかかることが多いということで、カラダの負担にならない範囲で一定の定常的な行動を維持することが有効なようで、食欲障害や睡眠障害といった症状が出ていないかどうかについて注意を払うことが必要だと言います。

 

 後はいつもの和田センセイ節ですが、食べたいモノを食べて、したいことをして、多少血圧が高かったり、太り気味だったりしても気にせず、機嫌よく生活していることが、何より認知症や老人性うつを避ける最上の暮らし方であり、上機嫌をキープしていくようにしたいところです。