60歳からの「忘れる」力/鎌田實

 

 

 60歳だと、まだちょっと若いかもしれませんが70歳に近づいてくると、極端にモノ忘れを恐れるようなところが多くの人にあるようですが、元々人間の「忘れる力」というのは、そんなに必要のない悲観的な記憶を押し出してくれるありがたい能力であり、生い先が短くなればなるほど、その能力を有効に生かしていくべきなのでは!?という鎌田センセイらしい提案が詰まった本です。

 

 ちょっと和田センセイの『80歳の壁』を思わせるところがあるのですが、あんまり細かいことにクヨクヨしないで、機嫌よく過ごそうというところがそういう部分だと思えます。

 

 ということで、あんまり血圧の値を気にしないとか、コレステロール値のちょっとした上下を気にしないとか、そういうことを気にしすぎる方が、数値のツジツマをムリに合わせようとするよりもずっと健康的に過ごせるんじゃないか!?というのは賛成ですし、最近紹介した久坂部羊さんの『寿命が尽きる2年前』でも触れられていたように、一定の年齢を過ぎたら、やたらと病院に罹らない方がQoLの向上につながるんじゃないか!?というところも賛成です。

 

 また、ある程度リタイアも視野に入れた年齢に差し掛かることから、これまでの人生で感じてくることが多かったと思われる義務感に雁字搦めになる生活も「忘れた」方がいいんじゃないか、ということで、機嫌よく過ごすことにフォーカスしようというのは有意義なアプローチなんじゃないかと思います。