ふがいないきょうだいに困ってる/吉田潮

 

 

 シニカルでありながら愛にあふれるメディア論で知られる吉田潮さんが、ご自身のお姉さまとの関係をキッカケとしてか、「ふがいないきょうだい」について、そういうきょうだいの被害を被っている人たちにインタビューをしてその実態に迫った本です。

 

 最近、脳科学者の中野信子さんの『毒親』など親からの害悪に悩む人たちがクローズアップされましたが、同じくきょうだいからも何らかの害悪を受けるケースも少なからずあるということで、様々なケースが取り上げられていますが、加害側のクズっぷりがハンパなくてオドロキます。

 

 自分は働かずニートであるにも関わらず親からカネをせしめて大金を湯水のごとく使ったり、暴言や性暴力、または安倍元首相の銃撃以来話題の「宗教二世」ですが、きょうだい間でも同様の問題が生じることがあるようです。

 

 そんなきょうだいとはさっさと縁を切ればいいのに…と思われる向きもあるでしょうが、親としてはデキの悪い子ほど可愛いという例えもあるように、どんなにヒドい子どもでも縁を切るというのはカンタンではないでしょうし、そうなるときょうだいはその被害を受け続けざるを得ないということで、中には自分から距離をとる人もいますが、そういうワケにはいかないという人もあるようですし、加害側からしてもそういう状況を薄々分かった上で理不尽な行動に出ているということで、肉親への甘えだったり、好意への付け込みだったりと、なかなか根が深い問題があるようです。

 

 自分がそういう立場になってみないとなかなか分かりにくいところはあるとは思いますが、最終章で、そういう問題を専門的に扱っている人の「縁を切っていい、離れていい」というコトバを紹介されていて、被害者自身の生活が壊れてしまわないうちに冷静な対応が必要なのかもしれません。