未完の天才 南方熊楠/志村真幸

 

 

 南方熊楠と言えば博覧強記の権化みたいなイメージがあって、偉大な研究者なんだろうなぁ、と思いつつもイマイチとらえどころがないという感じなのですが、結構南方熊楠の研究者という方々がいらっしゃるらしく、そのうちのお一人の方が南方熊楠の生涯にわたる研究について語られた本です。

 

 なぜ捉えどころのないイメージとなるのかということなのですが、割と狭い範囲の専門分野を持って、それを深く追求していくタイプの研究者が高く評価される傾向の強い日本において、一応博物学というカテゴライズはされるモノの、熊楠のように興味の赴くままに幅広い範囲に研究の対象を求める人が少ないということもあって、なかなか評価の軸を持っている人が少ないということもあるのかもしれません。

 

 博物学と関連の深い植物学だったら牧野富太郎だったり、一見あまり博物学とは関係のなさそうな民俗学では日本における民俗学の基礎を作ったともいえる柳田国男だったりとそれぞれの分野でのトップクラスとの学者と丁々発止のやり取りをされるほどの造詣があっただけでなく、何か国語話せるんだ!?と呆れられるほど多くの言語を操るなど、日本史上最も多才な人だったんじゃないか!?とすら思わされます。

 

 そういう世界観というか、スケールの大きさは他の追随を許さないでしょうし、多くの熊楠研究者を惹きつけるというのもどこか理解ができるような気がしました。