随分紹介が遅くなってしまいましたが、橘玲さんの今年3月出版の近刊です。(紹介する前に次の本も出てしまいましたが、そちらもそのうち…)
この本は2017年出版の『幸福の「資本論」』の続編とも言えるモノで、前作で幸福のロジカルな分析をされていて、幸福の要素として「金融資産」「人的資本」「社会社会資本」の3つのキャピタルに分類し、それぞれを大きくすることが「幸福」にどのように影響するのかについて語られていましたが、この本では「幸福」の感じ方の個人差ということに言及されています。
その概念の分析として「合理性の補助線」というモノを紹介されていて、金融資産は大きければ大きい程概ね幸福度に寄与するモノの人的資本、さらには社会資本に行くに従い次第に相関が下がっていくということなのですが、そんな中でコスパ・タイパ・リスパの感じ方によって、個人にとっての幸福度への寄与が変わってくるということです。
コスパはわかるとして、タイパはタイムパフォーマンスで、そのキャピタルを得るのにどれくらいの時間がかかるのかということで、リスパというのは、そのキャピタルを得るのにどれくらいのリスクがあるのかということだそうです。
それぞれ幸福の資本の数によって「貧困・プア充・ソロ充・孤独なお金持ち・リア充・ソロリッチ・マダム・超充」の8つに分類されていて、それぞれの類型の人生の6つの資源(収入・能力・職業・社交・愛情・子ども)の在り方を分析されています。
あまりのボリュームなんでそれぞれの分析の内容にはここでは立ち入りませんが、「幸福感」について行動経済学の知見などを交えて、個々の嗜好を踏まえて、如何に様々な選択肢のトレードオフを選択をしていくかについて、その軽重を丁寧に解説されています。
最近の橘玲さんの著作は『バカと無知』『言ってはいけない』などデビュー作『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』以降続く社会の不合理についての著作と、『専業主婦は2億円損をする』から始まった幸福の追求に関する著作が二本立てで進んでいるようで、最早総合的な思想家的な様相を呈しており、裏通りの「知の巨人」とも言えるかもしれません。
ということで、今年一番印象に残った本を紹介して、一年の締めくくりとしたいと思います。
今年も無事一日欠かさず記事をアップすることができました。
来年もまたよろしくお願いします!