学校で教えてくれない音楽/大友良英

 

 

 2013年に放送され社会現象にまでなったNHKの朝ドラ『あまちゃん』の音楽を担当したことで一躍名を馳せた大友良英さんが、2013年に開催されたあいちトリエンナーレで担当されたワークショップの様子をまとめた本です。

 

 大友さん自身、『あまちゃん』のテーマで象徴されるような親しみやすい音楽をイメージしますが、ジョン・ゾーンなど先鋭的なフリージャズのミュージシャンとの共演経験があったり、ノイズミュージックを手掛けられたりと、かなりトガッたミュージシャンだということで、実は学校の音楽の授業が大嫌いだったと冒頭で告白されています。

 

 その理由として、学校での音楽の授業って、西洋音階の型にハマった教育をしたり、クラスメイトの前で一人で歌わされたりと、音楽をキライになれ!と言わんばかりのカリキュラムで、後にミュージシャンになったり、そこまでいかなくてもバンドをしたりした人でも、音楽の授業がキライだった人は少なくないと思います。

 

 じゃあ、どうすれば音楽を、本来の「音を楽しむ」というところに近づけることができるか、ということが、このワークショップのテーマのようで、みんなで音楽とも言えないような、音を一緒に出したり、声を出していくことで、それほど意図したワケでもなく生まれるハーモニーの美しさを感じることで、その楽しさを実感されているようです。

 

 授業というカタチにしようと思えば、一定の「型」が必要なのは理解できるのですが、世界中の音楽のほとんどが西洋音楽平均律の型に収まるモノではなく、もともとそうではない5音階の日本の民謡みたいな世界とは、なかなか相容れないモノで、それで「音痴」なんて言われた日にゃあ、音楽がキライになってもムリなないよね!?ということで、もっともっと自由に音を出し合うことで、本来的な音楽の愉しみを提示する、ちょっとカンドー的な本でした。