リスキリングは経営課題/小林祐児

 

 

 日本の労働生産性の低さが露わになってから、リスキリングというコトバが取りざたされるようになって数年たちますが、欧米諸国が着々と効果をあげながら、日本は掛け声ベースに終始してしまい、より格差が広がっているという悲しい状況となっておりますが、どうやったらリスキリングが効果を上げるかということについて紹介された本です。

 

 これまでもリスキリングと似た概念としてリカレント教育とかが取りざたされたこともありますが、どうも日本人というのは「学び」に関心が薄いようで、今のところリスキリングも政財官挙げての掛け声ながらも一向に効果を上げる様子が見られない要因について、学ぶ側の個人的努力に依存しているからだと指摘されています。

 

 そうなると元々有能で意欲がある人がどんどんと新たなスキルをつける一方、大多数のその他大勢は何もせずに、より有能な人が抜きんでて、最悪リスキリングを推奨したが故に、有能な人が状況に失望して転職なんて笑えない状況にもなりかねません。

 

 じゃあ、その大多数がなぜ学ぼうという意欲がないのか、ということなのですが、この本の中でもいろんな要因を指摘されていて、例えば仕事についての受け身の姿勢だったり、学んでもそれを発揮する場面が著しく限られていたりということがありますが、結局は学ばなくても、それなりに仕事はこなせて、あんまり不利益を感じずに済めば、まあ学ぼうとしないですよねぇ…

 

 ということで、やはり会社としては学ばないと昇進もできないし、ヘタしたらクビになってしまうかも知れんぞ!?というある意味危機感を持たせるくらいの勢いが必要なんじゃないかと指摘されます。

 

 そんな中でジョブ型の導入と相まって、職務と必要なスキルを明確に提示し、社員側が自分が思うキャリアパスに必要なスキルが明確に分かるようにし、そのスキルを学べるようなカリキュラムの提供を行うといった、全社的な「仕組み」づくりこそがリスキリング成功の秘訣だということで、会社側もただただ社員の尻を叩くだけではなく、自分たちの覚悟も不可欠の要素のようです。