安い・美味しい・簡単 実践健康食/岩田健太郎

 

 

 コロナ禍突入直前のダイヤモンド・プリンセス号における厚労省医官の感染拡大対策に異を唱え、その後もコロナ禍におけるコメントで毀誉褒貶を浴びた感染症の専門医岩田健太郎さんが、医師の観点からの「健康食」を語った本です。

 

 糖質制限やなんたらダイエットなど健康のための食事についてメディアでも様々なモノが手を変え品を変え取りざたされますが、そのほとんどが基本的に科学的な根拠は希薄で、逆にカラダに悪いとされる食べ物も定常的に摂るのでなければそれほどの害はないという考え方の下、継続的に一定の健康を保つための方策について語られています。

 

 ただ、そういうことを言う際に、多くの医者は原理主義的というか、カラダによければどれだけカネがかかっても…みたいなことになりがちですが、医師でありながらファイナンシャルプランナーでもあるという岩田さんは、それじゃ持続可能性がないでしょ、ということで、コスト面にも配慮したカタチで、しかも楽しんで食事をするという観点も含めて、シアワセに過ごすための一環としての食事、という位置づけが好ましく思えます。

 

 そんな中で岩田さんが継続的な「健康食」の在り方として進められているのが、男性同士で同居するカップルの食生活を描いた『きのう何食べた?』で主人公の片割れであるシロさんが作る節約食をマネることを勧められています。

 

 シロさんは、基本的に割引になった食材を中心に献立を作られているということなのですが、割引になる食材というのは、その時期に多く供給されている食材であることが多く、多く供給されるというのはいわゆる「旬」であることが多く、一番栄養価が高くおいしいことが多いということもあって、カラダにもよくしかも財布にも優しいということで、再三この本の中でシロさんのメニューを実践することを勧められているのが印象的です。

 

 結局は色んなモノを楽しんで食べれば、それ自体が健康の維持につながるということで、ダイエットだったり高血圧や肥満の回避といった、健康のための手段に目を向けすぎているのがメディアで取りざたされる「健康食」の問題であって、コロナ禍の極論で批判を浴びがちだった岩田さんですが、感染症専門家のポジショントークとしてはそうならざるを得ないところもあって、むしろコメントを求める側の責任もあるんじゃないかとも思え、一冊を通して考え方のバランスの良さが際立っており、これだったら岩田さんのおっしゃるような「健康食」を取り入れてみようかな!?と思う人が少なくないんじゃないかと思いますので、是非ご一読の程を!