心の病気はどう治す?/佐藤光展

 

 

 医療ジャーナリストである著者が精神医療界のオールスターキャストをフィーチャーしたメンタルヘルスのガイドブックという位置づけの本なんだそうです。

 

 依存症、発達障害統合失調症うつ病・不安症、ひきこもりといった精神医療にまつわるトピックについて、それぞれの分野のエキスパートが治療の在り方について語られていくといった構成ですが、ある意味最先端の精神医療の状況が紹介されているだけに、その他大勢の一般的な精神医療の在り方の問題が浮き彫りになっているように思えます。

 

 精神医療というと、薬剤処方への依存が取りざたされますが、薬剤処方自体が必ずしも「悪」だというワケではないモノの、多くの場合精神科医が忙しすぎたり、効率を重んじたりする結果、ロクロク患者さんからヒアリングをすることもなく、外形的な知識や経験則で、こういった症状に当てはまるんだろ!?ということで、薬を処方して、合わなければ処方量を増やすといった対応をすることもあるようで、それが逆に依存症を生み出したりすることもあるようで、「白衣を着た売人」なってコトバすら取りざたされることもあるようで、そういった精神医療界の問題点を指摘する先生方が何人も登場します。

 

 そういった状況は他の診療科と違って、症状を目に見えるカタチにしにくいという精神医療特有の事情があるが故なのだとは思うのですが、それだけにキチンと患者さんと対話した上での治療方針の策定という、言ってみれば当たり前のことを勧めているのがこの本に登場する先生方で、そういったことをやっていない精神医療界ってどうなん!?と不信感を抱くんじゃないかと思うのですが、大丈夫なんでしょうか…