脱・叱る指導/村中直人、大利実

 

 

 近年、高校野球でも自主性を重視するチームが優勝を果たすなど、スポーツ界においても「叱る」指導にギモンが差し挟まれるようになりつつありますが、それでも今なお「叱る」指導が蔓延しているということで、その効果について語られています。

 

 よく、「怒る」と「叱る」の違いについて語られて、「怒る/叱る」側の感情に任せて相手に「怒る」よりも相手のことを考えて「叱る」べきだ、などと言われますが、著者の村中さんによると、受け取る側からすればいずれにしても、相手にネガティブな感情を抱かせるということで変わりはなく、反発を覚えたり、フリーズしてしまったりして、スポーツでパフォーマンスを向上させる上ではマイナスに働くことが多いと指摘されます。

 

 じゃあ、ホメればいいのか!?ということなのですが、ホメることも「𠮟る」同様、相手を「支配」しようとする感情に変わりはなく、「叱る」よりはマシではありますが、重要なのは「支配欲を手放し」て相手の自発的な気付きを促す「仕組み」を構築することがパフォーマンスを向上させる上でのよりよい対応になるとおっしゃいます。

 

 自分の感じ方を振り返ればわかると思うのですが、センセイとか上司に言われてイヤイヤ取り組むよりも、自分が自らヤル気になって創意工夫をして取り組んだ方が、結果はよくなることが多いことでしょう…

 

 それでも、スポーツの世界を中心に「叱る」指導が減っていかないのは、指導する側の「支配欲」みたいな本能的な欲求に根差すことが多いということで、パフォーマンスを向上させるために、指導者側の「自制」が求められるということです。

 

 確かに、短期的に「試合に勝つ」という意味では、「叱る」が一定の「結果」につながることはあるように見えますが、あくまでもその効果は短期的ですし、「試合に勝つ」よりも、チームメンバーの人間的な成長などといったより高次の目標を実現する上では無力だということで、そういう「より高次の目標を設定する」ということも、指導者側の「支配欲を手放す」という「仕組みづくり」のひとつの例だということです。

 

 「叱る」ことを避けるというと、「甘え」につながるんじゃないか!?という向きもあるんじゃないかとは思いますが、そういう考えが日本人の創造性を制限しているという側面は否めないように思えますし、若い人たちの能力を十全に発揮してもらう意味でも、スポーツ界に限らず、こういった考え方を一人一人が大事にしていきたい気がします。

 

 実は、昨日紹介した『15歳からのリーダー養成講座』とこの本で、どちらを昨年読んだ本の中で最も印象的な本として、年頭に紹介するかを迷ったのですが、甲乙つけがたく、年頭にこの2冊の本を紹介することとしました。(どちらの方がより印象的だったか!?というつもりはなく、読んだ順番ということで、こういうことになっております…)