メディアでも時折お見掛けするデータサイエンティストの宮田裕章さんが、データサイエンスの概況と可能性、取り巻く課題などについて語られた本です。
ITの進展について一般市民の視点から見ると、スマホの普及によるネット活用に目が行きがちですが、大量データを扱うための技術の進展でビッグデータの活用が可能になったことがもたらす影響は社会全体を揺るがしかねないモノのようで、石油などの化石資源や経済的な影響力が権威の源泉となってきた近代社会が、データのもたらす便益によって動く「データ駆動型社会」へと転換するのではないかというほどのポテンシャルがあるようです。
ビッグデータの活用によって、それまでの社会ではせいぜい「全体最適」を目指すくらいが関の山だったのに対して、ビッグデータにある個人のデータが加わることによって、その個人が抱える問題や課題への処方箋が提供できる可能性が出てくると言うことで、例えば宮田先生の専門分野である医療においては、治療法の最適解の提供などにつながる可能性があるということを語られていますが、それ以外にも貧困の克服などといった分野にも応用可能だということで、「個別最適・最大幸福」を指向することも不可能ではないということに、ちょっと胸が躍ります。
ただ、ビッグデータ、特に個人にまつわる情報の取扱いに対しては、ヨーロッパでのGDPRのように、GAFAのような巨大企業による個人データの濫用防止の意味合いもあってか、制限的なスタンスが目につくのが現状ですが、そういった社会全体へのメリットに鑑みて、これまでは絶対的だったプライバシー保護などの人権配慮についても一定の考慮を加えるべきなのではないかという動きもみられるようです。
そういう文脈で中国の信用スコアについて語られているのが少し意外な気もしましたが、特に無法地帯になりがちなネット空間において、一定の秩序維持の手段としての信用スコアの活用というのは一定の意義があるのではないかという指摘には、個人的には一定のナットク感のあるところです。
ただ、国境のボーダーの及びにくいネット空間で誰がどのようにそういったコントロールのをするのかについての議論は、まだまだ進んでない中で、どうやって「データ駆動社会」を実現していくのかについて、大いなる期待を持って見守っていきたいと、この本を読んで強く感じます。
