勝つ、スポーツサイエンス/田中誠一

 

 

 この方、2019年に叙勲をされている位の方で、日本のスポーツ界に科学的なトレーニングを導入した時期から関わられている重鎮だということで、長嶋茂雄さんや、ハンマー投げの室伏選手(おとーさんの方です。)、ボクシングの井岡弘樹選手など、名だたる選手たちの強化に加わって来たというスゴイ方らしいです。

 

 1964年の東京オリンピックの時期には相当な立場だったようで、そういうことにも触れられているとのことで、ソ連や東欧祖国のステート・アマチュアたちや、それに対抗するアメリカのスポーツ界の科学的要素の導入を横目で見ながら、根性論がはびこる日本のスポーツ界に科学的要素を取り込もうとされて来られたようです。

 

ですが、いかんせん「スポーツサイエンス」と銘打って置きながら、指導の内容のサイエンス的な要素がほとんどと言っていいほど見られず、有名選手の人となりや交流で、まあ、それはそれで意義があるのかも知れませんが、さすがにバカバカしくなって、途中からはザッと流してしまいました。

 

 戦後のスポーツ界に興味があって、おじーちゃんの自慢話にニコニコ付き合える優しい方は手に取られてもいいかも知れません。

はじめての日本神話/坂本勝

 

 

 高校生~大学生向けだと思われる新書シリーズの中の1冊で日本の神話についての本があったので手に取ってみました。

 

 サブタイトルにあるように『古事記』が題材になっているのですが、最近ハマっている宗教関係の一連の本を読むまでは『古事記』が「神話」だという認識は希薄でしたし、ましてやそれが宗教的な性格があるとは思ってもみなかったのですが、確かに『古事記』にはイザナギイザナミ天照大神が出てきてたなぁ…ということで、やっぱり「神話」なんだとナットクした次第ですが、「神話」というとキリスト教ユダヤ教の方を思い浮かべがちですが、なぜそういう風に感じていたかと言うのはこの本を読んでいて何となくわかった気がしました。

 

 というのも、『古事記』や『日本書紀』で取り上げられている「神話」というのは、特に『古事記』では地方の伝承みたいなモノが、かなりオリジナルに近いカタチで取り上げられていて、それだけにのちの天皇家の神聖性みたいなモノを考えると、大丈夫かと思うほど下世話な表現もあって、「神話」というよりもイメージ的には「民間伝承」といった方がいいような感じです。

 

 『日本書紀』になると、あくまでもその当時の日本の正史として位置付けるために編纂されたこともあって、『古事記』ではそのまま取り上げられていたオカルティックな色彩は多少は薄められているとのことですが、大きなストーリーはあまり変わりがないということで、イザナギが、亡くなったイザナミを追って黄泉の国に訪れて、腐敗した妻を見てショックを受ける描写はそのままで、二人の子である天照大神を始祖とする天皇家の源流に、そういう穢れみたいなイメージを背負わせるのはかなり意外でした。

 

 そういう下世話な部分も日本人が天皇家に親しみを覚える素地ともいえる気がしますし、日本人としては、世界最古の王家としてのオリジナルはやっぱり抑えておかないといけなかったですかね…

読書革命/金川顕教

 

 

 昨日に引き続き金川さんの本なのですが、昨日の本の肩書が「出版プロデューサー」だったのに対し、今日の本の肩書は「公認会計士」なんだそうです。(笑)

 

 昨日は「著者のススメ」だったのに対し、今日の本は「読書のススメ」ということですが、この方の芸風はかなり実利的な部分を重視される傾向が強いようで、ビジネスなりなんなりの教訓を得るための読書に役立つ方法ということです。

 

 この本で紹介されている方法では1冊30分位で読めて、しかもかなり内容の定着率が高いということですが、従来のいわゆる速読とは違うということで、その方法のキモとなるのが、

 

 ・1冊の本を1回だけでなく、それぞれ違う方法で4回読む

 ・1冊の20%を読むことで本全体の80%を理解する

 ・読んだ内容を誰かに伝える「アウトプット」を重視する

 

ということなんだそうです。

 

 その4回の読み方というのが、

 

 ・予測読み

 ・断捨離読み

 ・記者読み

 ・要約読み

 

ということなのですが、2W1H(What, Why, How)に着目して、まえがき、あとがき、目次などを駆使して、大体どんなことを言っているのかを掴み、ザッと全体を眺めて気になるところを読み、最終的にその本の言いたいことをまとめるようなつもりで読むということです。

 

 これでそんなに内容を把握できるのか!?と訝しむ向きもあるでしょうけど、この方『YouTube図書館』というご自身のチャンネルで毎日2冊の本を紹介しているということで、その中身が1冊辺り10分くらい話されているらしく、そう考えると、ワタクシのこのブログなんて、読んでしまうと1分くらいにしかならないだろうことを考えると相当な密度なワケで、かなりの情報を取れていることが推察されます。

 

 あとはアウトプットなワケですが、最近色んな読書法の本で、アウトプットが奨励されていますが、ワタクシのこんなグダグダした読書ブログでも、やはりそれなりの意識はしてしまうモノなので、何らかのカタチで人に伝えることの効果は高いんだろうなぁ、と思いますし、特にこの本で勧められているのは、誰かに本の内容を教えてあげることなんだそうで、可能であればそういう人を探してみると効果が高いようです。

 

 1冊30分だったら、通勤時間やお風呂の時間など、ながら読書でなんとかひねり出せると思うので、いちど試してみてください。

さあ、本を出そう!/金川顕教

 

 

 この本では肩書を「出版プロデューサー」とされていますが、新進のビジネス書の書き手であり、コンサルティングも手掛けられている方が紹介される、ビジネスとしての出版のススメです。

 

 オビには「ベストセラー」ということで風呂敷を広げたモノとなっていますが、コンスタントに1万部を売り上げる著書を出し続け、経営者の方が自身のビジネスのブランディングの一環として出版をするためのノウハウがメインのテーマとなっております。

 

 「ビジネスとしての出版」と言っているのは、出版をして印税を稼ぐことが目的ではなく、あくまでもビジネスに資するための出版ということなのですが、そこでのキモとなるのは、有能な出版プロデューサーと共に出版企画を立てるということと、ふんだんにプロモーションの費用をかけるという2つの要素だということです。

 

 ワタクシ自身が出版した際にも、かなり出版プロデューサーとの方に企画を練っていただいて最終的な出版に至ったのでわかるのですが、ある程度何らかのビジネス経験があって、どういう方向で出版を進めていきたいのかという意図がハッキリしていれば、どういう切り口で出版すれば目的を果たせるのかと言うことのロードマップを描くのは難しいことではないというのはナットクです。(ちなみにワタクシの場合は、この本に書かれているような出版プロデューサーに300万円も支払うような余裕はないので、成功報酬的な契約でしたが…)

 

 また、プロモーションの面ですが、この本の中で『お金2.0』の著者である佐藤航陽さんがプロモーション費用として5,000万円を費やしてベストセラーにした事例が紹介されていて、確かにワタクシ自身も京浜東北線の車内広告を見てこの本を手に取った記憶があるので、印税収入からするとマイナスだったということですが、ビジネス上の効果は絶大だったということで、そちらも出版プロデューサーの方との相談に次第で、それなりのプロモーション費用をかけてターゲットとなる読者層にリーチできれば、1万部くらいの売り上げを見込むのは荒唐無稽なハナシではないと思えます。

 

 昨今ではSNSを軸にしたプロモーションに注力する経営者の方は少なからずいらっしゃると思いますが、やはり未だに旧世代を中心として著書を出版しているというのは相当なインパクトにつながるという側面もアリ、やり方次第ではそれなりの部数も見込めることから、かなり確度の高いプロモーションと言えると思いますので、経営者の方々は是非とも尻込みせずに選択肢の一つとされることをおススメします。

旅が好きだ!

 

 

 最近度々紹介している「14歳の世渡り術」シリーズの1冊で、今回は各界の著名人による”旅のススメ”です。

 

 昨今は若年層の内向き志向が進んでいるということで、コロナ禍以前でも海外旅行の指向が減少傾向であると言われていますが、こちらは2020年6月というコロナ禍真っ只中での出版で、これを読んでウズウズしてしまったら、どう責任を取ってくれるんだ!?という感じなのですが、「旅が好きだ!」と言いながら、ほぼほぼ海外旅行に関するハナシで埋め尽くされています。

 

 モチロン国内旅行でもそれなりの非日常感は体験できますし、それはそれで有意義ではあるのですが、海外旅行で体験する”思った通りに行かない”体験が、14歳位から社会人になるまでの年代で、ひとしきり体験しておいた方がいいんだろうなあ、ということもありますし、それを手っ取り早く体験する手段が海外旅行なんじゃないかということです。(できれば、ツアーを避けていただいた方が有効かもしれませんし、この本ではツアーはスコープ外になっているように見受けられます…)

 

 そういうマゾヒスティックなところを強調するとヘンタイっぽくなってしまいますが、そういう困った状況を経た後に体験する素晴らしい風景や美味しい食事はひと際印象に残ることでしょう…

 

 ウチでも、ヨメもワタクシもフリーでの海外旅行の信奉者なので、ムスメたちには初の海外旅行の出発時点で、飛行機搭乗の直前に必要なビザが取得できていないというシビレる体験をさせてしまいましたが、それでも海外旅行には行きたいと言っているので、トラウマにならなくて済んで安心していますが、そういうシゲキもひょっとしたら何かの肥やしになっているんじゃないかと思えば、若い人たちには積極的に体験してほしいところですよね!?

なぜ「大学は出ておきなさい」と言われるのか/浦坂純子

 

 

 雇用や労働に関する研究を専門にされている方が、おそらく大学進学を視野に入れる年代の人たちに向けて書かれた大学で学ぶ意義を語られた本です。

 

 この本が出版されたのが2009年ということで、一世代後の現在では大学進学の意味合いも相当変わってしまったこともあって、ここで書かれている内容で最早有効性が薄れてしまっていることもありますが、人生と働くことと関連付けて学ぶことを語るというのは一定の普遍性があるんじゃないかと思えます。

 

 ただ、この方かなり論旨がとっ散らかっていて、せっかく上質なテーマで語られているにも関わらず、構成が希薄なので結果として何を言いたいのかよく分からなくなってしまっていますし、著者自身がバブル期に大学生だったこともあって、卒業証書を得るために大学に行く(ワタクシも同年代なんで、そういう側面があったことが否めないのはよくわかるのですが…)というミもフタもないことをおっしゃられていて、せっかくのテーマ設定が台無しに見えてしまいます。

 

 かつ企業が求める「働く」ことに向けた「学び」が企業側が求めているリテラシー的なモノに終始していて、これを読んで大学を志す年代の人が失望してしまわないか、ちょっと気になってしまいます。

 

 せっかくなら、「人生」の部分も絡めてもうちょっと高尚なトピックを聞きたかった気がします。

校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール/西郷孝彦

 

 

 先日紹介した雨宮処凛さんの『学校、行かなきゃいけないの?』で取り上げられていて非常に印象的だった世田谷区立桜丘中学校の校長先生の著書を早速手に取ってみました。

 

 『学校、行かなきゃいけないの?』でも触れられていたように、学校での高圧的な管理が不登校の引き金になることが多々あるということで、西郷さんが赴任した当初の桜丘中学校でも先生が生徒に怒鳴り散らして、ギスギスしたところがあったそうです。

 

 そこからどうすれば「生徒が3年間幸せに過ごせるか」ということにフォーカスして、個々の校則も合理性があるのかということを突き詰めていった結果、生徒の幸せに資する校則が無かったということで、結局校則がなくなってしまったようです。

 

 その結果、不登校だった生徒も、教室には入れないけど廊下や校長室でもいいよ、とハードルを下げることにより徐々に学校に来れるようになり、最終的にはフツーに教室で授業を受けることができるようになった生徒が多くいるということです。

 

 さらには、先生の方も校則違反を細々と注意しなくてよくなったということで、ストレスが軽減して、生徒との関係も良好になったという効果もあったようです。

 

 そういう風にすると収拾がつかなくなるんじゃないかとか、社会性が身につかないんじゃないかと訝しむ向きがあると思いますし、西郷先生自身もそういう危惧はお持ちだったようですが、生徒の方もそれだけの信頼をされると、それなりに応えてくれるということで、強制されることなく自律的に秩序を保つようになったそうです。

 

 ただ、暴力や盗みなどの犯罪については毅然と対応しているそうで、どうしても内部の不祥事を隠蔽しがちな一般的な学校とは真逆で、躊躇なく警察を呼ぶということで、最低限の社会性は強制力を働かせるべきだと考えておられたようです。

 

 そういう評判が不登校に悩む生徒や親御さんを呼んで、多くの生徒さんが越境してワラにもすがるキモチで桜丘中学校に来られたということですが、多くの元不登校の生徒さんたちがリッパに卒業して行かれたということです。

 

 先生方にとっては、どうしても目先の「管理」で秩序を保とうとする誘惑が働くとは思いますが、こういったカタチで生徒さんたちの「個」を尊重するカタチで強制されずに調和して行くような風潮が少しでも広がっていけばいいんですけどねぇ…