オランダ商館長が見た江戸の災害/フレデリック・クレインス

 

 

 以前、『京都ぎらい』の井上章一さんが所長を務められていて、『武士の家計簿』の磯田道史さんや『応仁の乱』の呉座勇一さんも所属されている国際日本文化研究センターのシンポジウムの様子をまとめた『戦乱と民衆』を紹介しましたが、その本の中でもメインの論者として登場されていたフレデリック・クレインスさんが、江戸時代の長崎商館長が日記や報告書などに遺した江戸時代の災害に関する記録について取り上げられた内容のモノで、その当時の時代背景などを磯田道史さんが解説されています。

 

 『戦乱と民衆』の中でも、オランダ商館長が残された記録が、かなり良質な史料であることに触れられていましたが、この本では日本史上未曽有の災害である明暦の大火や京都店名の大火、元禄地震など歴史の教科書でも取り上げられるような災害に遭遇してしまった様子を克明に紹介されています。

 

 長崎で閉じ込められているはずの商館長がなぜ江戸や京都の災害について克明な記録を残しているかというと、いずれも年次で将軍に謁見する際に災害に見舞われたということで、京都の大火はその途上だったいうことで、偶然に大災害に見舞われた不運には同情を禁じ得ませんが、それが故に通例とは異なる視点での災害の記録が残ったのは日本史的には幸運なことだったのかも知れません。

 

 大火や災害が大都市である江戸や京都でも頻発していたということもあって、それなりに大きな被害に見舞われるワケですが、かなり復興の方法論的なモノが経験則的に出来上がっていたようで、相当システマティックかつ迅速に復旧が図られる様子に驚かれたことが記録されています。

 

 また、かなり災害に見舞われた人たちのメンタリティも、慣れっこというか、かなり楽観的なことに驚かれており、そういうメンタリティというのは今なお、災害に耐性のある日本人のメンタリティに受け継がれているのかもな!?というきがします。