教養としてのラーメン/青木健

 

 

 ロゴの作成やメニュー表、丼からラーメンの盛り付けのデザインまでラーメン屋さんのビジュアルについてのアドバイスなどのサポートを手掛けられている方が、ジャンル分けや発展の推移、今後のラーメンの在り方など、ラーメンに纏わるあらゆるトピックを語られた本です。

 

 このタイトルだと鼻持ちならないウンチク本を想像する向きもあると思うのですが、著者の青木さんは、書きっぷりから伺うと謙虚なお人柄が感じられ、ラーメンに強いシンパシーを抱かれていることが端々から溢れています。

 

 ワタクシもまあまあ頻繁にラーメンを食べていますし、首都圏に単身赴任していた時にはこの本に取り上げられているラーメン屋さんにも数多く訪れたので、かなり馴染みを感じつつ読んだので、あまりに様々な側面が取り上げられていてどこから紹介したらいいのかかなり悩ましい所ですが、一応ビジネス関係の本を取り上げることが多いブログなんで、そういうところからアプローチしますと、ここのところネットメディアでも取り沙汰される「1000円の壁」についてのトピックを取り上げます。

 

 昨今の物価上昇で資材価格が高騰して、やむを得ず単価が1,000円を超えてしまったというところはあると思いますが、長らくラーメン業界では客単価1,000円が壁になってしまっていて、湯河原の飯田商店などの先進的な取組で敢えて1,000円を超える値付けをされた例もありますが、多くのラーメン店について1,000円を超える値付けがためらわれていたことについて、青木さんはラーメン店における滞在時間がその原因のひとつではないか、と指摘されています。

 

 パスタ店や中華料理店などではフツーに1,000円を超えるメニューを頼むことにあまりギモンを感じない人が多いのではないかと思いますが、ラーメン店で躊躇してしまうのは、あんまりラーメン店で長居する人がいないのに対し、中華料理店やイタリアンの店ではアルコールメニューなども含めて、ある程度の時間を過ごすことができるから、それだけの値付けができるというのは、かなり斬新ですがナットク感の多い指摘であり、そういう観点で1,000円越えの値付けをするというのは、経営戦略としてアリかも知れません。

 

 また、デザイナーが本職でラーメンの盛り付けについてもアドバイスされている青木さんだけに、ラーメンの見た目が食べる人に及ぼす見た目についても様々な指摘をされているのが興味深く、そういう部分を改善することで売上が劇的に改善するという側面もあるようです。

 

 その他、トッピングの提供の仕方での売り上げやロス低減の効果など、ビジネス面についてもかなり目からウロコの指摘をされていて、ラーメンが好きなビジネスパーソンにとっては楽しみながら知見も得られる貴重な本となっています。