ケーキの切れない非行少年たちのカルテ/宮口幸治

 

 

 精神科医として医療少年院で収監される少年たちの精神的な問題に携わられ、非行少年たちの多くが発達障害などの精神的な問題を抱える実態を紹介した『ケーキの切れない非行少年たち』が大きな話題をまきましたが、著者の宮口さんによると一部間違った受け取られ方をしているのが気になられたようで、ストーリー仕立てにしてよりリアルに少年院に収監される少年たちの精神的な問題を紹介された本です。

 

 概ね、内容としては『ケーキの切れない非行少年たち』や『どうしても頑張れない人たち』で紹介されている問題を踏襲しているワケですが、その実態を現実に即したストーリーをもって語られると、その恐ろしさをよりリアルに実感できるような気がします。

 

 精神的な疾患を抱えた少年たちは、やはりそういう部分の治療に本格的に取り組まないと、どうしても再犯の可能性が高まるという側面もあるようですが、慢性的に少年犯罪にかかわる精神科医の数が不足しているということもあって、常駐の精神科医がいる少年院はほぼ皆無で、週一程度の巡回がようやく…というところが多く、それすらもないところも少なからずあるということで、なかなか再犯率が低下しないという状況もあるようです。

 

 ただそれでも多感な少年たちだけに、何らかのキッカケで目覚ましい変化を遂げることも少なからずあるようですので、色眼鏡で見ずに変化のチャンスを与えるような体制をとってもらいたいものです…