忘れる脳力/岩立康男

 

 

 脳神経外科のお医者さんが「忘れる」ことの意義や機能について語られた本です。

 

 ワタクシも50歳代半ばに差し掛かり、ちょっとしたコトバを思い出せなかったりして、寄る年波を痛感させられることが多いワケですが、脳にとって「忘れる」ということはかなり重要な機能だということです。

 

 というのも、当然脳のリソースというのは有限であり、次から次へと新たなモノを記憶していこうと思ったら、それほど使っていない記憶を捨てていく必要がありますし、「考える」ことにも脳のリソースを使っているということで、その余地を残しておくために必須の機能だということです。

 

 どうしても我々は学校教育の中で記憶を維持し続けることを求められ続けたということもあって、「忘れる」ことに対してネガティブなイメージを持つ傾向が強いですが、ムリに過剰な記憶を強いると「考える」機能が低下するという側面もあるようで、年齢を経てからは、どちらかというとそちらの方が重大な問題を引き起こしかねないということで、若いころと比べると脳の容量自体も減少するようですし、比較的使用頻度の少ない記憶を追い払うということのようです。

 

 ただ、やはり生存にかかわるような記憶はちゃんと残しておいてくれるようで、アイツ嫌い!といった記憶も、社会生活を行う上で必要な記憶みたいで、ずっと記憶に残るということです。

 

 また、カンドーしたとか、恐怖を覚えたとか、情動を伴う記憶というのはいつまでも残るということと、記憶というのは五感のすべてを使って行っているということで、どうしても覚えておきたいことは、そういう工夫をするというのもアリなのかもしれません。

 

 ということで、モノ忘れについてそれほど悲観せずに、また覚えなおしたらいいや!位にとらえておく方が、逆にモノ忘れを遅らせることができそうですよ!