超デジタル世界/西垣通

 

 

 DXやメタバースなど昨今取りざたされるようになったICTの新たな技術について紹介するとともに、そういったモノが出現するようになった背景、今後の展開について語られた本です。

 

 著者の西垣さんは、元々ワタクシが現在勤務している会社でSEをされていたということでリアルに大先輩ということで、そういうシステム開発の現場での経験を踏まえて、昨今の新技術について語られるということで、AIについてやたらと危機感をあおるとかといったこともなく、地に足の着いた議論を展開されているのが印象的です。

 

 特に、こういった本にありがちな技術的な観点からの議論や、逆に技術的な背景に基づかないイメージだけのインパクトについて語るということではなく、なぜそういった新技術が開発されたのかという、社会のニーズなどといった背景に力点を置かれているため、却って技術の発展の必然性みたいなものがわかりやすくなっています。

 

 ただ、そのため説額や政治思想といった観念的なモノについて深堀されているので、かなり難解なところもあります…

 

 そんな中で日本が「デジタル後進国」となった背景について語られているのですが、元々割と日本はICTについては世界をリードするくらいの立場にいたはずなのが、いつの間にか中国やインドなどの後塵を拝するようになったのは、やはりインターネットの普及に伴う、コンピューターシステムのオープン化だと指摘されています。

 

 インターネット自体が元々アメリカで開発されたもので、「多様性・変化・平等」という価値観に基づいて生まれてきたモノであるのに対し、日本の「同質性・安定・階層秩序」という価値観と決定的に相容れないということもあって、これだけインターネットが広まっても、根っこの部分で受け入れらないところがあるということは、かなりナットク感の高いところです。

 

 しかも、ICTはよりオープンな方向に進みつつあり、思想的なところで決定的に相容れない日本はどんどんと取り残されて行ってしまうのでしょうか…