女人京都/酒井順子

 

 

 『負け犬の遠吠え』で一世を風靡し、『子の無い人生』などジェンダー論でも多くの著書がある酒井順子さんが京都を彩った歴史上の女性について、奈良時代から明治時代に至るまでの時系列で追った本です。

 

 この本は『本の窓』での連載をまとめた本なのですが、あとがきで連載を手掛けることになったキッカケについて触れられていて、京都では他の地域と比べて、歴史の中で取りざたされる女性が例外的に多くなっているということで、京都であれば「女性史」を辿ることができると思われたからということなんだそうです。

 

 当初、実際に登場する女性がいた場所を辿るカタチをとられていて、『女子と鉄道』などの著書があるように、この本でも「鉄子」的な要素を垣間見せますが、連載中にコロナ禍に突入し、出雲阿国のパートではストリートビューを駆使しての取材を試みたことなどにも触れられます。

 

 祈祷のために京都を音連れたという光明皇后からスタートして、平安時代清少納言紫式部建礼門院徳子、鎌倉時代には『十六夜日記』の阿仏尼、室町時代日野富子、戦国時代の北政所淀君、江戸時代の出雲阿国、幕末の和宮、お龍さんを経て、明治時代の新島八重に至るまで、ホントに京都を彩った女性はあふれんばかりの多さだということを再認識させられますが、やはりかなり平安時代に重点が置かれていて、それは政治と文化の中心をなしていたからというだけではなく、女性が女性らしくというか、「人間らしく」あって、非常に魅力的だったからだということもあるのでしょう。

 

 あくまでも貴族階級の話で、庶民階級の記録はあまり残っていないようですが、その後、武士の世となって、どうしても男性性が強調される社会になり、次第に女性が抑圧される傾向が強くなり、明治時代でピークを迎えた後に、次第に解放に向けた動きが出始めるところまでを描かれるカタチとなっていて、現在も平安貴族のような開放性を取り戻すには至っていませんが、女性にとっての本来の姿を認識しなおすという意味でこういった連載をされたのかなぁ、という気がします。