政治と宗教/島薗進編

 

 

 安倍元首相への銃撃を契機として、日本政界における統一教会との密接な関わりが取りざたされるようになりましたが、この本では統一教会自民党を始めとする日本政界との距離感、創価学会の政界への関わりなどの、日本政界における宗教との関わりを紹介するとともに、世界でも最も厳格に政教分離を捉えるフランスの状況と、逆に寛容なアメリカの状況も踏まえて、政治と宗教の距離感について紹介した本です。

 

 統一教会自民党との関係は、ズブズブといってもいいモノで、岸-安倍家だけではなく、福田赳夫氏や中曾根康弘氏といった歴代首相ともかなり深い関係にあったようで、有権者としては、明確に創価学会の影響下にあると表明した公明党とは異なり、ほとんどの人が統一教会の意向を斟酌せざるを得ない自民党に投票しているかと思うと、釈然としないものを感じるところがあったのかもしれませんし、強引な集金システムや拉致に近い所業を見ればなおさらだと思います。

 

 統一教会問題が取りざたされ始めたときに、フランスの反セクト法が話題になり、日本でも宗教法人の反社会的なカルト的活動に対して、そういう規制がかけれるべきなのではないかという声があったようで、この本でもそういう状況が紹介されていて、実は統一教会も反共を掲げて欧州における布教活動を試みて、フランスでは一部の極右政党に取り入ったものの、ソ連の崩壊後は反共の理念が希薄化し逆にカルト的姿勢が問題視されて排除されることになったようです。

 

 そういうカルト的な姿勢に対する規制というのはあるべきものなのかな、と思いますが、逆にそういう姿勢が行き過ぎて宗教的マイノリティに対する言われのない迫害といった副作用を生むといった側面も指摘されています。

 

 逆にアメリカでは政治と宗教との関わりについて、一定の必然性を認めるという姿勢が明確で、特定の宗教が国政において大きな影響を及ぼすことを防ぐという最低限の制限に限られており、そのためアメリカでは、時折特定のカルト宗教が深刻な社会的問題を起こすという副作用もあるようです。

 

 元々、政治と宗教は共に困窮する人々を救済するという共通した目的があるということもあって、一定の関連性を持たざるを得ないところはありますが、歴史上でも政治と宗教の癒着などの問題は繰り返し発生していることで、結局は有効な最適解を見出すのは難しいということなんでしょうねぇ…