なぜヒトだけが老いるのか/小林武彦

 

 

 以前、『生物はなぜ死ぬのか』を紹介した生物学者の小林武彦産の著書で、続編的な内容のモノです。

 

 『生物はなぜ死ぬのか』で、生物はその種の進化のために死ぬということを紹介されていたワケですが、実は「老化」というのはヒトに特有なモノなんだそうで、例えばサケなどは生涯の最後に最大のミッションである産卵を、全身全霊を傾けて行うということで、心身ともに充実した状態でミッションを実行し、それが終わった時点で果てたように逝くということで、その生涯のギリギリまで精力を維持している種がほとんどだということです。

 

 じゃあ、なぜヒトにだけ「老い」というモノが訪れるのかというと、生物学的というよりも社会的な側面が影響していることが多いようで、あまり生物学的にハッキリとしたことをおっしゃっていないのに、多少モヤモヤしたモノを感じますが、まだそれだけ研究の余地があるということなのでしょう…

 

 元々、ヒト自体、生物学的な寿命は50歳代前半位だと言われているようで、同じ霊長類のゴリラなどの種は、大体それくらいの寿命ですし、女性の閉経が大体その年齢ということを鑑みても妥当だと思えるところで、科学技術の進歩の恩恵の享受といった要素がそれ以上の寿命をもたらしているようです。

 

 ただ、そういった中で社会的にベテランとして役割を果たすために「老い」があるのではないか、とこの本ではおっしゃっていますが、まあ、それは理解はできなくはないのですが、生物学的な議論の中では何か釈然としないモノが残ります…