首都防衛/宮地美陽子

 

 

 「首都防衛」ということですが、首都・東京がどこかから攻撃を受けるということに対しての「防衛」ではなく、主に首都直下地震からの「防衛」を取り扱った本です。

 

 以前紹介した、『南海トラフ地震』でも触れられていたように、南海トラフ地震というのは、時期の前後はあれ、これまでの歴史の周期的な巨大地震の発生状況からして、ほぼ確実に発生することだけは間違いないようで、それが首都・東京に近いところで起こる可能性も決して低くはないということで、それなりの備えをしておく必要があるワケで、直近だと1923年に発生した関東大震災を始めとした、現在の首都圏を襲った震災や、近年の大震災の教訓を踏まえた、期たるべき首都直下地震への備えを語られています。

 

 リスク管理のセオリーとして、最悪の状況を想定した上で、発生しうる事象に対して、その対策にかかるコストを想定した上で、優先順位をつけてそれぞれの対策をすべきかどうかを検討するということになるワケですが、あまりにも考えられる影響範囲が大きすぎて「最悪」の想定が困難なだけではなく、つい10数年前の東日本大震災と比較しても、社会生活を取り巻く環境の変化が多すぎて、なかなか影響範囲が想定しにくいことも対策の困難さを増幅するカタチになっているようです。

 

 東日本大震災の時にはある程度普及していたモノの、当時、それ程多くの人がスマホに深く依存していたワケではなかったと記憶していますが、現時点だと生活のあらゆる局面でスマホに依存しており、充電切れが相当深刻な影響を及ぼすことを考えると、それだけでもパニックの恐れを想定しなくてはいけないようなことも考えられます。

 

 さらには、南海トラフ地震がプレートの作用によって発生する地震ということもあって、首都直下地震だけではなく、連鎖的にプレートに沿って連鎖的に巨大地震が発生する恐れすらあり、とてもじゃないですが事前の対策を万全にするということは考えにくいところです。

 

 とはいえ、ワタクシ自身直に体験した阪神淡路大震災東日本大震災でも、ちょっとした要因が生死を分けたこともあるように、確実にリスクとなるようなことは潰しておくことが、生存の可能性を高めることもあり得るワケで、家具を固定しておきましょうとか、イザという時の非難について事前に家族とすり合わせておきましょうとか、そういうことが生死を分ける可能性があるということを平時からキモに銘じておくべきだということを、こういう内容を啓蒙することの重要性を痛感させられる本でした。