なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか?/田中道昭、牛窪恵

 

 

 「ゆとり世代」というコトバを提唱したことで知られ、『おゆとりさま消費』など消費トレンドについての様々な著書も多く、メディアにもコメンテーターとして登場するのをお見掛けする牛窪さんが、リカレント教育でMBAの取得に取り組まれた際の指導教官である田中さんと、マーケティングの楽しさを紹介したい、ということで企画されたモノで、この本が出版された2019年当時にマーケティングの世界で話題になっていたという、LINEやメルカリなどのトピックについて、リサーチ編ということで牛窪さんがトレンドについて語られて、田中さんがマーケティングの理論的な背景を語られるというカタチを取られています。

 

 タイトルとなっているメルカリとヤフオクですが、同じC to Cのシェアリングエコノミーのプラットフォームでありながら、片や女性にウケて、一方が男性にウケるという対照的な顧客構成となっている事情について、片や共感やコミュニティみたいなモノの形成を志向しているのに対し、一方は狩猟的な闘いを志向しているということで、ターゲットとなる層により、これだけアプローチの違いが表れるということへの興味深さを紹介されています。

 

 最終章で田中さん単独でアマゾンのマーケティングについて語られているのですが、田中さんはアマゾンのマーケティングについて、この本が出版された2019年当時を取り巻く状況の中では、「究極のマーケティング」だとおっしゃられていて、その顧客への精緻なアプローチについて紹介されているのが興味深いところです。

 

 お二方ともマーケティングのダイナミズムみたいなモノを強調されていて、それがどこか小手先みたいな印象をもたられていることを残念に思われて、そのオモシロさの側面を訴求されていますが、仮説設定~検証の繰り返しによって、大きなチャンスを見出すといったトライアル&エラーというアプローチには知的好奇心をソソるところもあり、エネルギーあふれる若手のマーケッターの興味を促すのに格好のテキストと言えるかも知れません。