正義の味方が苦手です/古市憲寿

 

 

 『誰の味方でもありません』や『楽観論』と同様、『週刊新潮』における古市産の連載をまとめた本なので、あんまりタイトル自体が内容をダイレクトに反映しているワケではないのですが、全2作に比べるとコロナ禍の時期に執筆された記事が多いからか、割とタイトルに沿った内容のモノが多いような気がします。

 

 古市さん自身、コメンテーターとして出演されていた番組でのコロナ禍の時期のコメントって割と「自粛警察」みたいなモノに否定的なコメントを寄せられていたように記憶しているのですが、この本の中でも、まさか令和の世に「非国民!」みたいな声を聴くことになるとは…とおっしゃられていて、そういう日本人の同調圧力に基づく相互監視的なメンタリティは戦時下から実はあまり変わっていなかったということが露わになったということに、空恐ろしさを感じられているように見えます。

 

 ワタクシ自身古市さんのコメントに全面的に賛同してるワケではなく、むしろあまり空気を読まない感じにイラっとさせられることもあるのですが、1つのエッセイの中で、10年後の我々がコロナ禍を観たらどう思うんだろう…ということを10年前の東日本大震災に伴う福島第一原発放射能問題を思い起こしながら語られているのですが、古市さんの考えていることって、実はそれくらい俯瞰的なモノの見方をしていて、我々凡人の近視眼的な考えと相容れないから、時折違和感を感じてしまうのかもしれない…と思ったりした次第です。