都道府県の持ち方【増補版】/バカリズム

 

 

 バカリズムさんが各都道府県についてその形状に注目して、どういう風に”持つ”のかを語られた本です。

 

 バカリズムさんって、一応”芸人”として括られると思っていたのですが、プロデュース的なことをされていたり、本も書かれていたりとなかなか正体をつかみにくいのですが、そういうアヤシげなキャラが全開の内容となっています。

 

 それぞれの都道府県について「持ち方」だけではなくて、見開き2ページでダイジェスト的にプロフィールを紹介されているのですが、これがなかなか人を食ってるというか、人によっては怒り心頭の地元民も出てくるかもしれないというところもあります。

 

 各都道府県の「祭事」についての項目があるのですが、東京だと代表的な祭りというと多くの人が、日本三大祭りの一つと言われる神田祭を挙げると思うのですが、敢えて品川区の荏原祭りを挙げられているのが何と言うか…

 

 また名物を取り上げられているのですが、これがモチロンある程度有名なモノを取り上げられているんでしょうけど、ビミョーにどストライクのところを外していて、例えば山形だったら、さくらんぼとか将棋の駒とかっていうところなんでしょうけど、敢えて仏壇を挙げられています。

 

 ただ、各都道府県の名前の由来と全国一のアイテムを紹介されているのは割とマトモなところなのかな…

 

 「持ち方」についてはかなり暴走気味で、三重県をショットガンに見立てて見たり、愛媛県エレキギターに見立てて見たりとやり放題なのですが、これもアメリカのように人工的に県境が決まったワケではなく、地形や歴史的な由来を踏まえての境であることをリスペクトして、とマトモなことをおっしゃっていますが…

 

 まあ、万遍無く全都道府県をチャカしておられるので、笑いながら読んで、各都道府県の小ネタを仕入れられるという、意外と有意義な本です。

マンガでわかる!高齢者詐欺対策マニュアル/西田公昭

 

 

 いわゆる”オレオレ詐欺”ですが、ニュースなんかで事件の顛末を聞いていると何であんな単純なことで、しかも散々手口をバラされているにも関わらず次々とダマされる人が続出するのかがフシギだったりしたので、そういうところを知りたくてこういう本を手に取ってみました。

 

 冒頭で、タイポロジーというか、読者自身がココを突かれるとアブナイ!というところを診断するチャートがあり、ダマされやすい手口が分かります。

 

  多分、詐欺グループの親玉クラスはこういう心理的な傾向を踏まえてシナリオを汲んでいると思われ、それぞれのタイプに合わせて、泣きを入れたり、脅してみたり、慌てさせてみたりという手段を巧みに使い分けているものと思われます。

 

 この本はこういう詐欺対策に通じた心理学の専門家が書かれているのですが、あくまでもダマす方はプロで、シロウトをダマそうと思ったら造作ないんだということをキモに銘じておくべきだとクドイくらいに強調されています。

 

 特に日本人はダマされてしまうことに罪悪感を感じて、無かったことにしてしまいたいという人が多いようで、そういう心理的なスキを突こうとするケースが多いようで、仮におカネをだまし取られてしまったとしても、そのあと詐欺を捕まえてもらうような動きを取って欲しいということをおっしゃっています。

 

 しかも、様々な救済措置もあるので、決して泣き寝入りしないことが詐欺を蔓延させないためには重要なようです。

シニア鉄道旅のすすめ/野田隆

 

 

 小学生くらいの時にブルートレインブームがあって以来の”鉄”で、基本的にはいわゆる”乗り鉄”だったのですが、さすがにいいオトナがそういうのもなぁ…と思って、結構長い間、そういうことからは離れていたのですが、世の中が”鉄”を受け入れるようになった頃合いに単身赴任で関東在勤になったのを期に、これは関東一円をできるだけ乗っておかなければ!ということで、”乗り鉄”趣味が復活したしたワケです。

 

 ただ、相変わらず高校・大学時代あたりの18きっぷを駆使しての貧乏旅のクセが抜けなくて、いろんな意味でボチボチそういうところから、ある程度脱却しないとなぁ、と思ってこんな本を手に取ってみました。

 

 基本的にこの本はワタクシのような元鉄はスコープ外というか、それ以外のテリトリーの方々を誘い込むのがテーマのようですが、ゴリゴリ乗ることから脱却できないシニア目前の”乗り鉄”にも参考になるでしょ!?という魂胆です(笑)

 

 ゆったりとゼータクな時を過ごす豪華列車や、ランチやディナー付きの列車など、割とおカネのかかることを紹介してはいるのですが、それだけではなくて、JR東日本の「大人の休日俱楽部パス」など、かなりおトクに多少ラグジュアリー感のある旅をするための方策なんかも紹介されていて、これだったらワタクシの鉄旅にヨメが乗っかる可能性も無きにしも非ずかな!?ということで参考になります。

 

 まあ、まだワタクシも現役なんで、そこまで時間に余裕はないですが、もうちょっとしたらこういう時間をゼータクに使う旅ができるかな、と思うと、ウマくヨメをこういう方向に誘導するネタを提供していただけて、なかなかありがたい本でした!(笑)

あぶない家計簿/横山光昭

 

 

 ”家計再建コンサルタント”として数多くの家計を立て直してきた横山さんの家計再建本なのですが、これまで『年収200万円からの貯金生活宣言』など、割と貧困層の家計再建に関する著書が多かった気がするのですが、この本では世帯年収800万円以上のいわゆる”中の上”の層の家計崩壊を中心に語られています。

 

 世帯年収800万円以上で毎月赤字とか、貯蓄ゼロとかっていうとはかなり意外な気がしますが、家計再建に携わるファイナンシャルプランナーによると、こういう層が財政危機に陥りやすいというのはコンセンサスが出来上がっているそうです。

 

 というのも、一見家計に余裕があるように見えるだけに子どもの教育に惜しみなくつぎ込んだり、食の安全などのこだわりや趣味への出費を惜しまないことがあり、そういうモノが積み重なって、気が付くと赤字になっているということが多々あるようです。

 

 しかも、特にダブルインカムの家庭で夫婦別会計になっているところで顕著なようですが、家計の全体像を把握していない場合に、赤字に陥ることが多いようで、多少年収は多くても家計の全体像をキッチリ把握していないと、カンタンに財政危機に陥るようです。

 

 ということで、よく横山さんの著書で言われているように、家計の見える化を行うことが重要で、どれだけの出費があるのかをキッチリ把握した上で、固定費を中心に削減を図っていくことで、元々収入が多いだけに、ある程度カンタンに家計の再建を図れる場合が多いようです。

 

 ちょっとおカネを持っているからと言って油断をするとヤバいみたいなんで、しっかりとウォッチを怠らないようにしましょう!

なんで英語、勉強すんの?/鳥飼玖美子

 

 

 日本を代表する通訳者であり、最近は異文化コミュニケーションの研究者としての顔を前面に押し出しているらしい鳥飼さんが、中学生をターゲットにした「英語学習のススメ」です。

 

 いずれ日本でも英語が必要になるから…と学生に英語学習をたきつけて、早数十年が経ちますが、大半の日本人にはオトナになっても英語が必要ない状況が続いていますし、AIの進化でいずれ自動翻訳が進んで行って、ホントに英語学習が必要なのか!?と思える状況が進んでいますが、それでも自分が英語を話せるようになれなかった親からすると、何とか子供たちに英語を話せるようになって欲しいという切なる願いを抱いているのは、二人のムスメ達を持つワタクシも理解できます。

 

 そこで鳥飼さんにモチベートしてもらいたいところなんですが、この手の本では珍しく、割と歯切れがよくありません。

 

 趣旨としては「この本では、「異文化コミュニケーションとしての英語学習」「英語と日本語の違い」という二つの点を中心に」説明されて「それなら、やっぱり英語を勉強してみようかな」と思ってもらえたら…と冒頭でおっしゃっておられますが、読み進めてみるてもなかなかメリットを感じにくいモノとなっています。

 

 まあ、それでも「英語という外国語を学ぶと、世界への窓を一つ持つことができます。」とおっしゃっておられるのが、普遍の意義であって、曲りなりに多少は英語でのコミュニケーションができるようになったワタクシもその重みは感じることができますが、その入り口に立っている学生さんたちに、それを得るために必要な労力と天秤にかけた上でのモチベーションになりうるかと聞かれると、なかなか難しいんじゃないかという気がします。

 

 結局は他の分野と同じで、どこまで興味を持てるかにかかっていて、功利的な動機で取り組んでもウマく行かないってことなんでしょうかね…

晩節の研究/河合敦

 

 

 河合センセイの偉人たちの後日談的な本ですが、『殿様は「明治」をどう生きたのか』『幕末・明治 偉人たちの「定年後」』のように、立場や時代のシバリがなく、全時代からピックアップされていて、河合センセイならではの意外な小ネタが効いています。

 

 成功者が晩節を汚すとかといったことが言われますが、この本で取り上げられている人たちは割と有名な人が多いので、最期の状況まで知られていることが多いのですが、それでも結構へぇ~と思うネタが少なくありません。

 

 例えば、室町幕府の最後の将軍である足利義昭ですが、織田信長に追放された後は歴史からフェードアウトしたような印象がありますが、毛利家の庇護の下、しぶとく復権の機会をうかがっていたようで、晩年には秀吉の下で、秀吉が敵対していた大名との渉外などの役割を果たしていたようなのが意外でした。

 

 また河合センセイはマジメそうな風貌からすると意外なのですが、ネタとしてウケるからなんでしょうけど、割と下世話なエピソードを披歴することが多くて、一休宗純がエロ坊主だったとか、小林一茶が性豪だったという小ネタもしっかりと紹介されています。

 

  また、それなりに有名な人を取り上げていることが多いのですが、知る人ぞ知るというチョイスも少なからずあって、”佐幕”の河合センセイらしく幕末期の異能の幕臣として新政府側から恐れられて惨殺された小栗忠順が紹介されていたり、貝原益軒や平賀源内という江戸期の文化人が取り上げられているところも興味深い所です。

 

 さらには、源義経が生き残ってチンギス・ハーンとなった説はよく知られるハナシですが、西郷隆盛に生存説があって、新政府への不満ゆえなのか、西郷人気のなせるワザなのか、かなり広く信じられていたというハナシはワタクシも知らなかったので興味深い所でした。

 

 ということで、歴史をかじり始めの人だけでなく、割と詳しい人にも楽しめるマニアックなネタもふんだんに盛り込まれていますので、ちょっとした小ネタの仕入れに如何でしょう!?

新実存主義/マルクス・ガブリエル

 

 

 最近特にコロナ禍以降、マルクス・ガブリエルという名前を聞くことが多くなったので、どんなことを書かれているんだろうと興味があって、近くの図書館にこの本があったので手に取ってみました。

 

 いやーそれにしてもかなり久しぶりに、ほぼほぼ全くといっていいほど手に負えない本に出くわしてしまいました。

 

 こんな難解な著者がベストセラーになるのか!?とちょっとビックリしてしまいますが、どうやらこの本は割と観念的な内容によっていて一般的では無いようで、よく売れているらしい『全体主義の克服 (集英社新書)』なんかは一般向けだということで、多少は分かりやすいんでしょうか…

 

 多分10%も内容を掬えてはいないのですが、それでも科学の進化でこの世界のかなり多くの部分を説明できると多くの人は思っているはずなのですが、それでも最も身近なはずの人間の思考のメカニズムすら解明できていないじゃないか!?と指摘されていて、そういう科学万能みたいな考え方はすこし言い過ぎなのではないか、というところは何かイタイところを突かれた想いのする人が多いのではないでしょうか…

 

 そういうガブリエルさんの思考というのは、AIに対する考え方にも表れているようで、この本に触れられていることではないのですが、シンギュラリティなんてありえない!と断言されているのは、こういう考え方を窺うと深くナットクできるところではあります。

 

 あまりに難解なのですが、それでも何か惹かれて止まないものがあるのが不思議で、もう少し一般向けの本を探して、改めて読んでみたいと思います。