続・マラソンランナーへの道/鍋倉賢治

 

 

 昨日の続編です。

 

 昨日の本は初心者がターゲットだったのですが、この本はサブ4を経てサブ3という、市民ランナーの中で3%程度しか達成していないモノも視野に入れた内容となっています。

 

 本来なら、個人的には2年振りのレース復帰の準備としては見ない方がいいのかもしれませんが、ついつい2冊ならんでいたので手に取ってしまいました。

 

 一応、正編でサブ4を達成したのが前提みたいになっていて、じゃあ次はサブ3って単純に思う人が少なからずいるようで、いやいやそんなカンタンなハナシじゃないんですよ!?というところから始まります。

 

 個人的にはサブ4達成後には、サブ3.5すら覚束なかったので、そんなお調子モノがいることが考えられませんが、やはりかなりキビシいトレーニングが必要だということは理解していますが、練習の考え方として、

 

 1.力をつけるための練習

 2.力を出すための練習

 3.力を出し切る練習

 

の3つを挙げられているのが目からウロコで、ワタクシ自身は1.の練習しかしていなかったことがよくわかりました。

 

 また、サブ3などタイムを伸ばしていこうということだけでなく、長くランニングを愉しもうという観点も紹介されていて、故障がちなワタクシなどもヨメに、そろそろタイムばかりを追うのは考えたら、と言われるたびに、それじゃ張り合いがなくなるから…といっているのですが、生涯スポーツとして愉しむための観点を取り入れられているのも、あまり他のマラソン本になかったところなので、参考になります。

 

  当面は目の前の復帰レースへの準備ですが、ワタクシのようなビミョーな年代のランナーにとっては、いろんな意味で走り続けるための勇気をもらえる本でした。

マラソンランナーへの道/鍋倉賢治

 

 

 以前は年間5回程度マラソンのレースに出場していたのですが、コロナ禍の影響で2020年1月下旬に走ったっきり、2年近くマラソンのレースから離れてしまったこともあって、オミクロン株の動静が気になるところではありますが、3月に復帰戦を予定していることもあって、マラソンレースの取組を思い出そうと思って、こんな本を手に取ってみました。

 

 この本はマラソンの初心者をターゲットにしており、特に一度レースに出たモノの、ちょっとトラウマっぽくなるような経験をされた方をメインのターゲットにされているようで、ある程度ロジカルな準備をすることによって、かなりラクに完走できるよ、ということと、もう少し先を見据えて、市民ランナーの最初の勲章とも言えるサブ4も現実的な目標となるということを指摘されています。

 

 この本では、ずっと同じペースでフルマラソンを最初から最後まで走り切ることをススメられており、そのために自分にとっての最適のペースを見出す方策を紹介されています。

 

 そんな中でLT(乳酸性代謝閾値:Lactate Threshold)という、体内の乳酸分泌が急増する負荷のレベルがあり、そのギリギリ下の負荷で走ることが、その人にとっての最適のペースになるということです。

 

 あまりマラソンに詳しくない人は、そんなのどうやって測るの?と思われるはずで、ここでは詳しく紹介するのは煩雑なので避けますが、ある程度擬制的に推測する手段があり、それで把握しておくことの重要性を強調されています。

 

 ワタクシ自身、あまりそういう厳密な取組を経ることなく、定期的に長いキョリをゆっくり走ることでサブ4を達成したのですが、復帰に際してはこういうことも活用して、老化に抗って再びサブ4を目指してみようかな…(笑)

異文化コミュニケーション学/鳥飼玖美子

 

 

 日本を代表する通訳者である鳥飼さんが異文化コミュニケーションを語るということで、言語に関することかと思いきや…

 

 鳥飼さんはコロナ禍の”巣ごもり”で韓流ドラマにハマられたようで、その中で特に『愛の不時着』というドラマをキッカケにかなり多くの韓流ドラマを見られていて、異文化コミュニケーションに想いを致すことになったようで、そんな関係でこの本を書かれることになったようです。

 

 韓流ドラマを題材にしているからと言って、日本と韓国の文化の差異をどうのこうのというワケではないようで、そのドラマの中に出てくる、違う「文化」からきたキャスト間のやり取りについて印象に残ったところを取り上げておられます。

 

 鳥飼さんが「異文化」を取り上げているからといって、必ずしも国をまたいだモノに限られるワケではなく、育った環境が違えばそれはまさに「異文化」であって、身近なところで言えば、高校や大学に進学して違う中学、高校から集まってきた当初は「異文化」といえるワケですが、言ってる間に同じ「文化」を共有するようになる人もいれば、なかなか「文化」に入り込めない人もいたりして、そういう同じ空気を共有する過程を「異文化コミュニケーション」とおっしゃっているのかな、という気がします。

 

 言語が違えばモチロンですが、同じ言語を話しているが故に却ってバックグラウンドの違いが理解を阻害するということがあるということを、ドラマの場面を取り上げて指摘されているのが印象的で、自分のバックグラウンドのある意味特殊性を意識していないと、相手のことを理解できないケースがあり得るんだ、ということを身近な人を相手に話す時にも、少しは念頭に置いておいた方がよさそうです。

 

  鳥飼さんの著書だけに言語的なことを期待した人にはビミョーに肩透かしかも知れませんが、コミュニケーションの本質的な部分を語られているようで、なかなか深遠な内容だと思えました。

本を売る技術/矢部潤子

 

 

 

 あけましておめでとうございます。

 今年もこのブログをよろしくお願いいたします。

 

 今年は、本を紹介するブログにふさわしいこの本から始めてみたいと思います。

 

 この本は、長らくパルコブックセンターに務められた方のご経験を、本屋でアルバイト経験のある出版社の営業の方がインタビューされるというモノで、我々からも見える”本屋さんあるある”からお客さん側からは見えない様々な工夫や苦労を語られていて、このブログの信念を飾るのにふさわしい、本好きにはタマラナイ内容となっています。

 

 矢部さんのご経験の深遠さもさることながら、インタビューをされている杉江さんのアルバイト経験に基づく、時には重箱の隅を突くようなネタがあってこそ、矢部さんの経験を十全に引き出せたんだろうなあ、という気がしますが、ここまで細やかに心配りをしている人は多くないのかも知れませんが、本屋さんってここまでいろいろ考えて店づくりをされているのか!?と驚きます。

 

 単に本を並べるといっても、当然その置き方によって全然売上は異なってくるということもあって、売上を最大化するために、経験に基づく精緻な戦略があるようで、それもベストセラーだけじゃなく、普段はあまり動きのない学術書のような本も含めて、どういう客層を狙って、どういう割合でどのジャンルの本を売るのかという戦略の下、書架や平積みなどの配置を決定されているということで、それを聞いただけでも気が遠くなるような思いがします。

 

  さらには並べる本をどのように仕入れるのかについて、単純に売れた本をそのまま仕入れるという単純なモノではなく、時系列的にどれくらい動いているのかを考えながら、その時点でのベストセラーや人気作家の新刊本の予定なども勘案しながら、自店がスペース的・コスト的な制約を勘案しながら、できる限り売上に貢献できるような在庫構成を考えないといけないということで、何分アイテム数が他業種と比較して群を抜いて多いだけに、難しいところです。

 

 とは言いながらただ単に売上が上がればよいと考えておられるワケではないようで、ご自身の”推し”も交えながら、読書文化の繁栄も念頭に置きながら取り組んでおられるようで、知れば知るほど書店員さんって尊い職業だと再認識できる本でした。

歴史探偵 昭和の教え/半藤一利

 

 

 今年の一月に亡くなられた”歴史探偵”半藤一利さんの遺稿集です。

 

 タイトルには『昭和の教え』とありますが、モチロン半藤さんのメインフィールドである昭和史についての内容はふんだんにありますし、歴史的にもあらゆる時代のトピックをカバーされていますし、テーマとしても、半藤さんのライフワークである戦争の惨禍を次世代に伝えるシリアスな内容から、和宮様のトイレについてのおハナシなどかなり下世話な内容まで含まれていて、半藤さんの懐の広さを垣間見えるモノとなっています。

 

 ただ、この本の目玉となるのは、皇室警察の『二・二六事件記録』が発見されたのを受けての二・二六事件の振り返りという企画で、二・二六事件における反乱軍の動静を辿って、その意図を推し量るといったモノが取り上げられています。

 

 その中で反乱軍がロクに弾薬も持たず皇居に押し入り、天皇陛下に自分たちの決起の意図を説明すれば賛同してもらえると思っていたという、おおよそ軍人とは思えないファンタジーで反乱に及んでおり、リアリズムの権化であるはずの軍人がこんなんじゃ、破滅に至るよなぁ…とあきれるばかりです。

 

 精神論的なモノが大事なのはわかるのですが、そればかりに依拠してしまう日本人の考え方って、結局今に至るまであまり変わっていない気がして、危ういなぁ、ということを半藤さんは警告を鳴らし続けておられたのですが、こんな体たらくです…

 

 今年の最後の記事として半藤さんへの追悼の意味も込めて、遺稿集を取り上げてみました。

 

 ということで、今年もこのブログにご訪問いただき、誠にありがとうございました。

 

 今年は10月くらいまではコロナ禍の影響が大きかったのですが、図書館の閉鎖などには至らず、無事一日欠かさずアップすることができました。

 

 来年もできれば毎日アップしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

 

話すための英語力/鳥飼玖美子

 

 

 NHKラジオの英語講座など長きに渡り英語教育に多大なる貢献をしてこられた伝説の同時通訳者鳥飼玖美子さんがスピーキングにフォーカスして英語力を語られた本です。

 

 この本は『本物の英語力』『国際共通語としての英語』を受けての三部作の完結編とも言える位置づけだということで、多くの日本人が身に付けることを切望してやまない「話すための英語力」について語られたものなのですが、全2作ほど体系的な内容ではなく、思う所を書き留めた散文的な印象を受ける内容なのですが、それだけに鳥飼さんのホンネが散見されるモノなんじゃないかと思える内容になっています。

 

 長らく通訳者として活躍されてきただけに、鳥飼さんは「話すための英語」のプロ中のプロであるワケですが、ご本人はどこか「話すための英語」のプロは書き言葉としての英語のプロよりも軽く見られているんじゃないか、ということに触れられています。

 

 だからといって難易度が低いのかといえば、全くそんなことは無くて、むしろ瞬発的に様々な要素を過不足なく満たした上で話さなければ、ヘタをすると誤解を招いて、モノによれば外交問題にかかわる可能性のあるような場面にも関わられてこられたということで、かなりイタイ想いも、シビレる想いもされてきたようです。

 

 それも教科書的に、こういうことに気を付けておくことと言い切れることばかりではないようで、こういうシチュエーションだとこういう言い方はマズいよね…ということが数限りなくあるようで、幅広い範囲での深い経験があって初めて、ある程度の信頼感が得られるという、なかなかに一筋縄ではいかないお仕事のようです。

 

 ワタクシ自身も多少英語ができるということを知られたばかりに、ちょっと通訳してもらえるかな!?みたいなことを気軽に言われたことがあるのですが、英語が多少できることと通訳ができることの深く広いキョリをコンコンと語って怪訝な顔をされたことが何度かあります。

 

 ということで、英語が多少できるようになったからと言って、カンタンに英語が話せるとノボせ上がらないのが身のためではあるのですが、だからといってそういうことを恐れてばっかりいたら、いつまでも話せるようにはならないワケで、イタイ目やシビレる場面に如何に遭遇するかということが”英語が話せる”ようになるための不可欠の過程であって、積極的にイタイ目に合わないといけないようです…

USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?/森岡毅

 

 

 先日、ご自身のお嬢さんに宛てたキャリア指南本『苦しかったときの話をしようか』を紹介した森岡毅さんが一躍名を馳せたUSJのV字回復に取組んだ過程と共に、その際のアイデア出しのノウハウについて語られた本です。

 

 森岡さんはコスメのメーカーからUSJにヘッドハンティングされたということで、畑違いの商売からいきなり成果を出されたということで、マーケティングのシロウトであるワタクシなどはかなりフシギな気がしますが、この本を読んでいると腕のいいマーケッターっていうのは、あんまり売るモノの違いって気にしないのかもなぁ…という気になってきます。

 

 元々、テーマパークがお好きだったそうで、駐在されていたアメリカでもあちこちのテーマパークに行かれていて、USJからの打診があった時には勇躍して応じられたようです。

 

 ただその頃のUSJは入場者数もジリ貧状態で、新たなアトラクションを導入する予算にもかなり限定があって八方塞がりといった状況だったようなのですが、それでも新たな機軸を打ち出して業績を回復させる必要があって、テコ入れの手段を考える中で、タイトルにある既存のジェットコースターを後ろ向きに走らせるというアイデアをひねり出して、大きな効果を得たということのようです。

 

 そういうアイデアなのですが、森岡さんがおっしゃっているのは徹底的な消費者目線ということをおっしゃられていて、元々テーマパークがお好きだったということもあって、毎日のようにパークを歩き回って業績向上のネタを探し回ったということです。

 

 そんな中でファミリー客の掘り起こしを狙っていながら、身長制限で小さな子供が乗れるアトラクションが少ないことが阻害要因になっているということで、ユニバーサル・ワンダーランドを開設したということです。

 

 さらには、これだと思ったネタには徹底的に入れ込んで、ご自身がその対象にのめり込むようで、USJに「モンスターハンター」のアトラクションを導入する以前に、1000時間以上もゲームをされたということです。

 

 マーケッターというのはここまで対象物にイレ込まなければならないのかと、ちょっと気が遠くなってしまいますが、森岡さんは追い込まれた状況でアイデアをひねり出さなければいけないというキビシイ状況に置かれながら、それでも楽しんで取り組まれているように見えるのが強みなのかな、という気がして、やはり仕事も楽しんだモン勝ちなのかも知れないですね!?