裏道を行け/橘玲

 

 

 2016年出版の『言ってはいけない』以降、階級社会の固定化に纏わる、「下級国民」にとって、まだまだ下はあるぞと言わんばかりに底に突き落とすような著作を連発している橘さんですが、この本は久しぶりに救いを見出す本のように、タイトルからはうかがえます。

 

 この本は『上級国民/下級国民』『無理ゲー社会』に続く三部作の完結編という位置付けなんだそうですが、「格差」が固定化してしまい「自分らしく」生きることが大多数の人にとって「無理ゲー」となってしまった昨今、数少ないそのための手段がHACKだということで、「恋愛」「金融市場」などのジャンルにおいて、如何にHACKしていくかということが紹介されています。

 

 HACKというと、基本的にはインターネットにおけるハッカーなど、あまりプラスのイメージが無いかも知れませんが、ひと頃、『IDEA HACK!』小山龍介さんらが提唱された一連のLIFE HACKに関する著作などのイメージがあれば、一工夫っぽいイメージがあるかも知れません。

 

 いずれにせよ、ちょっと脇道というか、人が攻めないところから攻めることで、ある一定の自己実現を図ろうという側面があり、前例が少ないということはそれなりに険しい道を辿ることでもアリ、数少ない成功例とともに、多くの悲惨な末路も紹介されているのが橘さんらしいところのような気がします。

 

 この本を読み進んでいて、初期の著作で未だ版を重ねているらしい『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』が想起されたのですが、あとがきで最近若い読者の間で『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』がHACK的な読まれ方をしていることに触れられていて、橘さんは20年の時を経て原点回帰されたのかな!?とも思いました。