接待の一流/田崎真也

 

 

 ”世界一のソムリエ”田崎真也さんが伝授する「接待」の極意です。(笑)

 

 レストランでサーブする側からみて、田崎さん的にはホントに日本人って、接待下手が多いと、この本の冒頭で嘆かれているのですが、その原因として多くの日本人、特に仕事として接待をする人の多くは、いい店を予約すればそれでコト足れり、と思っている人からなんだとおっしゃられています。

 

 要は店を予約したら、後は店に丸投げってことで、接待をする側の「ホスト」の役割を放棄してしまっていることが多々見られるということなのです。

 

 田崎さんは「接待」というのは、接待をする側である「ホスト」とされる側である「ゲスト」と、ホストの手足となって働く「サービススタッフ」の三者の協働作業だとおっしゃっておられて、あくまでもお店の人は「サービススタッフ」であって、必ずしももてなしの主題ではなく、全体のもてなしの在り方であるグラウンドデザインはホストが描くべきなのですが、多くの場合そういう意識が希薄だということです。

 

 ホストがどういう風にゲストを接待するかということを考えて、それに最もふさわしい店を選ぶことが第一歩で、その店が自分の意図するもてなしをできるのかということを確かめるための「下見」はある意味必須だということです。

 

 そこでお眼鏡にかなったお店を予約するワケですが、それだけではまだ不足で、自分の意図をちゃんと店側に伝えることも重要だということです。

 

 さらに、それ以前の段階でも、ゲストの好みをリサーチしておく必要があるでしょうし、予算を考えておくこと、様々な制限事項をクリアしておくこと、欧米などではそういう緻密なプランの上で「接待」が行われているということで、本来ゲストに心底喜んでもらおうと思えば、それくらいの労は厭うべきではないようです。

 

 この本はいわゆる接待だけではなく、後半に「デート」編があり、そういう接待のノウハウは、かなりの範囲でデートにも応用できるということで、このノウハウをマスターすれば、人生のかかったデートにも成功を収めることができるかも!?

誰とでも10分以上会話が続く本/植西聰

 

 

 以前、『折れない心をつくるたった1つの習慣』などの著書を紹介した植西聰さんの著書ですが、この方スピリチュアルな感じの自己啓発書を手掛けられることが多いのかな、と思っていましたが、こういう実用的なモノも手掛けられていたのですね!?

 

 個人的には、割と話せる方だとは思うのですが、初対面の人…特にステキな若い女性と打ち解けて話すのには多少苦手意識があって、人見知りを自称しているのですが、ワタクシを良く知る人にそれを言うとハナで笑われてしまいます…

 

 この本では初対面の人とある程度以上に会話を継続できるための、心構えからちょっとしたコツまでを網羅されているのですが、やはりハートの部分が伴わないと、なかかな細かいテクニックはついてこないので、個人的には心構えの部分の記載がありがたい所です。

 

 その心構えの部分で何度か指摘されているのが、等身大以上に自分を大きく見せようとする…要は、ちょっと見栄を張ってしまう意識が自然な会話を妨げる部分があるということで、そういわれてみれば自分にも思い当たるフシがあって、自分のありのままを見せようとすれば、それほど緊張はしないのかも知れません。

 

 あとは、ありがちな失敗パターンや、ちょっとしたキッカケなんかも紹介されているのですが、それよりも待ち合わせに余裕をもって早めについておくとか、身だしなみを小綺麗に整えておくとか、会話に集中できるような状況を作ることが会話をスムーズに進めることにつながるというのが役に立つ気がしました。

 

 またやはり、会話というのは如何に相手を尊重するかということが重要なようで、相手に興味を持って、でも立ち入り過ぎないように配慮することが肝要なようです。

60代から心と体がラクになる生き方/和田秀樹

 

 

 精神科医和田秀樹さんの”リタイア本”なのですが、和田さんは精神科医でも、高齢者を専門とされていたんだということで、まさに専門ドストライクの著書だということのようです。

 

 ”リタイア本”というと、中には老後の不安を煽るようなモノも一部には見受けられるのですが、先日紹介した大江英樹さんの『「定年後」の”お金の不安”をなくす』が老後のおカネの不安を払しょくする意図で書かれていたのと同様に、この本は、おカネと並んで老後の不安要素の2大巨頭のうちの一つである健康面の不安を払しょくするべく執筆されたということのようです。

 

 特にいわゆる「認知症」への恐怖というのはかなり大きな不安要素だとは思うのですが、75歳になると多かれ少なかれほとんどの人が認知症の要素を抱えていて、むしろ細かなことを気にしなくなるというプラスの要素もあるということで、ある程度ポジティブに受け入れていい部分もあるということです。

 

 また高血圧やガンについても、あまり神経質になることで却って精神疾患を招きかねないということで、ある程度おおらかに受け止めることが却ってQoLを向上させることにつながるんじゃないか、ということを提唱されています。

 

 高齢になって医者にかかると、酒やタバコや食事内容など、とかく制限をされがちですが、そのことによる精神的な負荷はバカにできないようで、むしろ精神疾患へのケアを主眼に置く方が、充実した老後の人生を送る上では重要なんじゃないか、というのがなかなか斬新で、目からウロコの提唱だと思いませんか!?

幸せはあなたの心が決める/渡辺和子

 

 

 2012年に出版された『置かれた場所で咲きなさい』が大きな話題をまき、ノートルダム清心女子大学で長らくカトリックの教えに基づいた教育に携わられて理事長まで務められ、2016年に亡くなられた渡辺和子さんが、おそらく学生さんをメインターゲットにされたと思われる著書です。

 

 ノートルダム清心女子大学カトリックの教えの元に設立された大学だということで、自助努力を強調するプロテスタントと比較して、救いを求めることに主眼をおくようなイメージがあったのですが、かなりキビシイこともおっしゃっておられます。

 

 ご自身も、希望されていた修行先に受け入れてもらえなかったというご経験もあるということで、それなりの苦難を受けることが、先々において自分の人生がより自由になるということに触れられているというのが、カトリックのイメージとしてはかなり意外な発見でした。

 

 また自分の心持ちを変えることで、積極的に心の平穏を求めようとするところなどは、仏教の教えに通じるところもあり、宗教間のアプローチの差こそあれ、到達しようとするところは、似たところがあるのかな、という印象も受けました。

 

 キリスト教の教えということでは、”知の怪人”佐藤優さんの一連の著書でプロテスタントの教えについては多少触れつつあったのですが、カトリックの教えについても学んでいきたいと思わされました。

危機の正体/佐藤優

 

 

 約一年前に出版された本ですが、”知の怪人”佐藤優さんがアフターコロナに訪れる「危機」について語られます。

 

 この本の執筆時点ではまだ安倍前首相が退任していなくて、コロナ以前にもかなり全体主義的な体質を持った政権であって、コロナ禍によってさらにその色彩が濃くなって行ったという側面もあって、その性質を官房長官として体現していた菅氏が首相となったこともあって、昨今そういう色彩がより鮮明になったように思えます。

 

 最近よく言われるようになっているのですが、そういう空気は戦前の大政翼賛体制にかなり類似している部分が多いということで、1年前時点でその性質を指摘されています。

 

 また、「プラハの春」を弾圧しようとしたソ連侵攻下における親ソ連派による監視体制への類似性にも触れられていて、そういう手法が法制上ロックダウンをできない日本のコロナ対応において、同調圧力に基づく相互監視といった共通点について指摘されていて、アフターコロナにおいてもそういった全体主義的な性格が継承されて行ってしまうことについて大きな危機感を示されています。

 

 また、大企業を中心にテレワーク導入を進めていったことを契機に、ジョブ型の雇用形態を推進していっていることもあって、新卒一括採用の形骸化が懸念されていることもあって、従来とはことなり会社が人材育成を放棄して、出来上がった人材を雇用しようとするインセンティブが強く働くということもあり、どういう意味でもかなり自律的にキャリアデザインを迫られるというキビシい競争環境を予測されています。

 

 まあ、当たり前といえば当たり前の姿なのかも知れませんが、個人的にはほぼほぼキャリアを終えようとする時期でよかったなぁ、とは思いますが、こういうキビシい社会に今から直面するムスメたちの行く末に一抹の不安を覚える次第です…

伸びる子は○○がすごい/榎本博明

 

 

 先月『読書する子は○○がすごい』を紹介しましたが、実はコチラの方が先に出版されていたようで、またやらかしたぁ!?と思っていたのですが、『~子は○○がすごい』ということで、それ程関連性の強いモノではなかったので安心しました。

 

 まあ、読書をしなくてオトナになるのもそれなりに危機的な状況ではあるのですが、この本で取り上げられている『○○』が欠けている子がそのままオトナになって社会人として会社に入って、相当コマッた状況になっている直属の上司の方々がいらっしゃると思います。

 

 というのも、この本で取り上げられているのは、「叱らない子育て」「ほめる子育て」で育てられて、甘やかされて…と言ってしまうと語弊が無くも無いのですが、子供のころにあまり困難に直面することなくオトナになってしまって、まったくガマンが効かない状態で社会人になってしまって、周囲に毒をまき散らすような状況にもなっているようです。

 

 まあ「叱らない」「ほめる」ということに一定の意義があるのは認めますが、そういう風にコドモを傷つけないように、という親の配慮が、どうしようもなく傷付きやすいコドモを作ってしまっているという逆説的な状況がかなり多くなってしまっているということで、しかもそういう子に限って、勉強などは優秀だったりするので、それをアテにして採用した会社は困ったことになってしまっているようです。

 

 ということで、この本ではある程度の逆境を耐えるチカラであるレジリエンスを身に付けさせることが、昨今の状況においてかなりのアドバンテージを得ることにつながるようですが、既に50歳代のワタクシなんかからすると、勧められている子育ての内容ってかなりフツーに思えるもので、昭和の子育てもバカにしたもんじゃないということになるんでしょうか…

今日が人生最後の日だと思って生きなさい/小澤竹俊

 

 

 終末医療を専門とするホスピスを主宰されている先生が、2000人以上の患者さんを看取って来られたご経験から、終末期の患者さんの心のありようについて語られた本です。

 

 基本的にはホスピスに入られる方というのは、積極的な治療を終了されて穏やかな最期を迎えるための準備をされる方がほとんどだということなのですが、多くの患者さんが死と向かい合って、その恐怖を乗り越えて、静かな心境に到達されるということなのですが、高齢の方ならともかく、かなり若い人の看取りのご経験も紹介されていて、それでもかなり「悟り」の境地に向かわれるというのが、どういう心持なのかが理解できないでいました。

 

 ただ、追い詰められた状態になって、患者さんご自身の中でもかなりの葛藤を経た上で、これまで顕在意識の中で大事にしていたものも、次第にホントはそうではなかったことがわかり、最後にホントに自分が大切にしたいと思っていた価値観だけが残り、そういうモノと共に最期を迎えようという心境になるからこそ、穏やかな心境になるのかも知れません。

 

 フツーに健康に生きていると、タイトルで推奨されているような心境になるのはムズカシイのかも知れませんが、なにが自分の人生にとってホントに大事なことなのかを時折自分に問いかけるのは、人生を充実させるためにも大事なことなのかも知れません。