和の国富論/藻谷浩介

 

 

 『デフレの正体』や『里山資本主義』で知られる藻谷さんが、危機に陥っている分野で着実に成果を残しつつある人と対談した『しなやかな日本列島の作り方』の続編とも言える本で、実はその後この本は『完本 しなやかな日本列島のつくりかた: 藻谷浩介対話集 (新潮文庫)』というカタチで正編に飲み込まれてしまうんですけどね…

 

 この本では、林業、漁業、学級崩壊、高齢者問題といった、それなりに深刻なテーマを扱っていて、以前『甦る教室』を紹介した、学級崩壊対策で知られる菊池先生との対談も含まれていて、ちょっとこの話が全体を象徴しているような気がしているのですが、学級崩壊というのは「学級」というコミュニティが機能不全に陥っている状態だとすれば、国会を始めとして日本全体が多かれ少なかれ「学級崩壊」的な様相を呈しているのではないかと指摘されているのが言い得て妙で、ずっと以前だと学級であったはずのコミュニケーションの質が低下したことで、以前だったら放っておいても勝手に当事者同士がケリをつけていたはずのことを、いちいち問題にするという感じで、そういう中で成長したら、ロクに自分たちでトラブルを解決できないオトナが出来上がるということは容易に想像できることで、フツーの人としての営みを放棄して効率ばかり求めるようになって、日本人の質が以前に比べると見る影もなく低下していることが、この本を読んでいると、現在の日本に根差す様々な問題の要因のような気がします。